17。殺意を抱く瞬間

 「ただいまー」

力なく声を上げて荷物を荒っぽく置き、額の汗を拭いつつ台所へ向かった。縛った髪を解くことも、硬いスーツを脱ぐことも後にして。

 台所に一歩足を踏み入れると、半袖短パン姿の光輝と入れ替わるようにすれ違った。が、今の私はそんなことを気にする余裕もなく、真っ先に冷凍庫に向かう。

 ガラッ

「……ない」

 思い当たる奴は一人しかいない。一瞬にして全身が冷えた。冷凍庫をパタンと閉め、トン、トンと廊下を歩いて、扉の前に立った。食い逃げ犯の名前を呼ぶ声は、アイスクリームより冷たかった。

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