壱
あの日は桜の蕾が膨らみはじめた暖かな日だった。
「いいか、失礼な態度はとるな。なにかあっちゃいけねぇ。勝手に口をきくな。」
大きな背中がそう語る。なるほど親父がそう言うのならばそうしなければならないのだろう。これからどこに行くのかも知らない。出先の手伝いの後の行かなければならない場所で、だから自分がついて行かされているだけのこと。親父の行動を詳しく知ることは許されない。ただ、ついて行くだけなのだ。
ただ大きな背中を追って歩いていくと、背中は足を止めた。止めた先にあったのは、平屋だった。普通の平屋。いや、普通よりは奥行もあり大きいのか。
「失礼する。斉藤です。」
その家に入っていく。その家には、
「おお、これはどうも。モノは無事できていますよ」
と、朗らかに笑う親父よりも大柄な男性と、
「いつもご贔屓にしてくださりありがとうございます」
と口元は笑っているが目は笑っていない、髪を簪で纏め着物を来た女性。そして、
「……その子はだぁれ?」
大柄の男性の後ろから顔を覗かせたのは、溢れそうな程の花の柄が誂えられた着物を着た小さな女の子だった。
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