幾年のこひ~千代に八千代に~

久間ねねこ

プロローグ

 大正帝都は今日も晴れ。一九ニ○ 年、小春日和の二月。

 肌を刺す空気を眩しい陽射しが和らげてくれていた。

 知り合いの苦々原邸にいるのは『至急、屋敷マデ来ラレタシ』という怪しい電報を受け取ったからだった。まったく、怪しい研究をしていたと思ったら今度はなんなんだろう。白い息を吐き敷地へ足を踏み入れた時、小鳥のように高く、透き通った、とても聞き慣れた声がした。

「あら、柊も」

 艶やかに腰まで伸びた黒髪、それとは対象的な透き通った白い肌、椿のように華やかな袴を身に纏った華奢な身体。

 あゝ、君もーー

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