第8話 よろしくね

家の中にまた入った私たち。

本当は大人を呼んだほうがいいんだろうけどそんなの待ってたら茉莉奈たちがどうなるか分からない。


部屋を出て階段がある玄関に向かおうとすると、


「あの…」


高めの女性の声が聞こえた。

私の声ではない。

朝輝と顔を見合わせる。


朝輝はお前かとアイコンタクトを送ってきたが

違うと答える。


「あの…」


また聞こえた。

私たちの後ろからはっきり聞こえる。

私たちは意を決して後ろを振り返る。


「っ…!」


二人で声を上げずに驚く。


私たちの後ろには、ボロボロの服を着ているとても綺麗な顔立ちのお姉さんが立っていた。


朝輝が私の前へ出る。


朝輝「誰ですか?」


「私はここに囚われたものです。名前はアキです。どうか私も連れてって。」


朝輝と私に訴えかけてくる。


沙里奈「あそこの窓が開いてるのでいつでも逃げれます。」


私はさっき入ってきた窓を指差す。


朝輝「俺たちは一緒に来た友達を見つけてから出るんで、先にあそこから逃げてください。」


アキ「ありがとうございます。では…」


そういってお姉さんと別れる。

二人でその部屋を出た後安堵のため息が漏れる。


朝輝「びっくりしたな。」


沙里奈「ね。まさか、他の人もいるなんて。」


「あの…」


またあの声が背中から聞こえてくる。

二人で肩を上げてびっくりする。


アキ「私も手伝います!」


朝輝「え?」


アキ「私だけが一人逃げるのもなんだか申し訳なくて…。私ここの家の間取りわかるので役に立つと思うんです。」


朝輝「どうする?」


沙里奈「アキさんは一人で来たんですか?」


朝輝の質問を無視してアキさんに質問を投げかける。


アキ「はい…。罰ゲームで一人ここで一晩泊まれって言われて…。あそこのベッドの下でずっと隠れてたんです。」


だからあそこの部屋から出てきたのか。


沙里奈「囚われてるって言ってましたけど、ここの家主にですか?」


アキ「多分…。噂の魔女がまだここにいたのかも知れないです。」


朝輝「その魔女見たんですか?」


アキ「はい、一瞬姿を見られて完全に戸締りされちゃって、夜はずっと隠れてなんとか過ごしてました。」


うむむ…と二人で考え込む。


沙里奈「安全は保証できないですけど、本当にいいんですか?」


アキ「はい!恩を返さず終わるのは気がひけるので。」


沙里奈「じゃあ一番後ろにいてください。危ないと思ったら一人でもいいんで逃げてください。」


アキ「ありがとう。それじゃあお友達探しに行きましょう!」


なぜこの状況で笑顔になれるのか不思議だったが間取りを知っているいい助っ人ができた。

これですぐに茉莉奈たちを見つけられる。

待っててね。

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