第5話 大丈夫
朝輝「え…?」
茉莉奈「どうしたの?…え?」
茉莉奈たちの驚いた雰囲気が声だけでわかる。
急いで茉莉奈たちが入った部屋を見るとそこはキッチン。
西洋風で壁がタイルでできていてオーブンやコンロもレトロでころんとしたデザイン。
そこにも驚いたが、みんなが驚いていたのは暖炉に大きい鍋が引っかかっていて火が付いている。
これが匂いのもと。
野菜がはいっているスープが煮込まれている。
朝輝「これってやばいよな。」
沙里奈「帰ろう!」
優大「そうだね…。」
茉莉奈は怖くて声が出ないようだった。
急いでさっきいた部屋から玄関へ行こうとすると
そちら側の方から足音がギィ…ギィ…とゆっくりこちらに向かってくる。
優大がジェスチャーでこっちと言って違う部屋に行く。
みんなもそれにつられて付いて行く。
間一髪足音の正体と鉢合わせとはならなかったが
このあとどうすればわからなくってみんなパニックになっていた。
「いい匂いだねぇ、これはジャスミンかな。」
足音の正体の声は艶っぽい女性の声だった。
だけどジャスミンなんてあの部屋にあったっけ?
「今日はご馳走かな、ステーキ、ポトフ、ブラッディーマリーも作れる。今日は可愛らしい子2人来てるからお肌も若返りそうだ。」
え、なんかやばくない?
これって私たちの誰か食べようとしてるよね。
みんな同じことを考えているような顔だった。
ひとりごとをしゃべっていた人はまたどこか違う時部屋に行って何処かに行ってしまった。
朝輝「今のうちにダッシュで玄関に行こうぜ。」
優大「ダッシュしたらすごい音が出てしまいそうだから慎重に行こう。茉莉奈ちゃん立てる?」
こくっと頭を一振りして茉莉奈が立ち上がる。
優大「それじゃあ行こう。」
ドアを少し開けて外の様子を伺う優大くん。
大丈夫と口を動かしてドアを開ける。
誰もいないキッチン。
朝輝「俺が前行くから優大後ろ見てやって。」
優大「わかった。」
朝輝、沙里奈、茉莉奈、優大の順で次の部屋に入る。
あの食事用の部屋。
誰もいないことを朝輝が確認して部屋に入りみんな続いて入る。
次の扉を開けて客間ににけば後は玄関に行くだけ。
次の扉を開けようと朝輝がドアノブに手をかけようとした時
茉莉奈「階段…。」
と言った。
恐怖で目の前の扉にしか集中していなかったが階段を降りる音が聞こえてくる。
玄関前の階段だろうか。
優大「あそこのテーブルの下に隠れよう。」
と小さく囁き、クロスがひかれているテーブルを指差す。
足音を最小限にしてみんなでテーブルの下に隠れる。
隠れた時ちょうど茉莉奈と真正面になるような形で入ったので目の前に茉莉奈の顔があった。
必死で声を押し殺して涙を流している。
もっと私がちゃんとみんなを引き止めておけばこんなことにならなかったのに。
ごめんねと心の中で思いながら茉莉奈を抱きしめる。
茉莉奈も強く抱き返してきた。
ジャスミンの香り…茉莉奈のシャンプーのことだったのかな。
[ガチャ…]
部屋に誰か入ってきた。
「うーんと、これをここに置いて…」
ダンっと私たちが隠れているテーブルの上に何か置く。
急な音に声が思わず出そうになるのを我慢する。
「あー、一人でやるの大変。誰か手伝ってくれないかしら。」
と言いながらキッチンにその声の持ち主は行ってしまった。
朝輝「行く?」
優大「まだ。」
とジェスチャーを送る。
と同時にまたあの足音が戻ってくる。
「ここはOKだから野菜取りに行こっと。」
と言い、バタバタと足音を立てて玄関を出て鍵を締める音がした。
シン…と静まり返る屋敷。
朝輝「行こう。」
優大「あとちょっと頑張ろう。」
優大は茉莉奈を引っ張り上げて立ち上がらせる。
そしてみんなで玄関に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます