いつだってカルボナーラ
早起きしちゃいました。
昨日、家に着いてメイクとか落としてお風呂入ったら、疲れてたのかな、たぶん寝ちゃったの、八時くらいだったと思います。
今は朝の五時です。日曜なのに、早起きしちゃいました。
そしてお腹がすきました。
むー。水分も補給しないとですね。お酒も飲みましたから。常備してるカゴメの野菜ジュースを、水でちょっと薄めて飲みます。昔ながらの、甘くない野菜ジュースです。これがいいんです。
と、引き出物の大きな紙袋が目に入りました。持って帰ってきたっきり、まだ開けてませんでした。けっこう重かったです。
中身は……あ、やっぱり。大きめのお皿が二枚、ありました。定番ですね。深さがあって何にでも使えるタイプです。二枚。二枚です。一緒に使うお相手がいません……。
ま、それはいいです。さっそく使ってみましょう! ささーっと洗剤で洗っておきまして、さあ!
朝ごはんを作りますよ!
いつものカルボナーラです!
そう、わたしは大体いつも、いつだって、朝はカルボナーラなんです。そういえば言ってませんでしたね。スパゲティ・カルボナーラです!
理由はいくつかありましてですね……。
まず、栄養バランス!
炭水化物は、パスタ……スパゲティでばっちり、元気もりもりです!
たんぱく質と脂質も、たまご、チーズ、ベーコンで言うことなしです!
玉ねぎも使いますので、血液さらさら! 健康です!
あとはレタスをちぎって食べるか野菜ジュースでも飲んでおけば、ビタミンも大丈夫です!
調理時間も、20分もあれば余裕です。
細めのパスタで手早く攻めれば、10分ちょっとでできちゃいます。
忙しい朝でも、(洗い物の手間はありますが)それほど負担になりません!
そして、いちばん大事なことには――
腹持ちがいいです!
これが最も重要ですね。うん、間違いないです。
朝食にはトーストも似合いますしわたしも好きですが、いかんせん! すぐにお腹がすいちゃいます。ベーコンエッグにはもうひと押し、何か欲しいなって思うんです。
腹持ちで言ったら和食もよいですが、鮭を焼いてお味噌汁も作ってごはんも炊いて納豆もかき混ぜるのは、なかなかの手間だと思っちゃいます。そもそも、うちのコンロにはグリルがついてません。残念です。
というわけで、さっそくいってみましょう!
『料理の初手は、お湯を沸かすこと』
パスタを茹でるためのお湯ですね。片手鍋に水を入れて火にかけます。一人分なら、これで十分です。
お湯が沸くまでの間に、ソースを用意します。
・たまご 1こ
・チーズ チェダースライス1枚+ピザ用チーズを同じくらい
・黒コショウ
・コリアンダー(乾燥粉末)
お椀にたまごを割り入れます。
チーズですが、チェダースライスなんて名前で売ってる橙色のスライスチーズがおすすめです。包丁で短冊状にちょっと細かく切って、それと同じくらいの量のピザ用のとろけるチーズと一緒に加えます。
そして黒コショウ(必須)を振って、コリアンダーはお好みです。これをひと振り入れておくと、全体的に味がキュッと引き締まります。
これだけです! 簡単です!
このチーズの合わせ技は、わたしが色々試した結果、行き着いたものです。
ナチュラルチーズは高いですし味もバラバラです。
プロセスチーズなら、どこでもだいたい同じのが売ってますし安いです。
普通のスライスチーズなら、ちょっとあっさりめの仕上がりになります。
続いて、ベーコンを切っておきましょう。
スライスベーコン1枚、ハーフベーコンなら2枚で一人分です。
切り幅は……お好みで! 大きく切ると、ちょっと自己主張が強い感じします!
お湯が沸いてきます。塩を忘れずに入れましょう。
チーズの塩分があるとはいえ、たまごを使うので味がぼやけがちです。
なので、この段階で塩を気持ち多めに入れておくと、ちょうどいいです。
2~3割増し、小さじ2杯くらいかな?
そしてパスタ……スパゲティを投入します。
菜箸でさわさわして麺が泳ぐようになってまた沸騰したら、前回と同じで、蓋をして火から下ろします。
すかさずフライパンをコンロに乗せ、オリーブ油を大さじ1杯ほど。
そして、すっかりおなじみのS&Bローストガーリック(あらびき)と、同じくS&Bの一味唐辛子をササッと入れます。
が!
火は弱めておきましょう! 弱火でいいです。
ちなみに、ここは一味唐辛子じゃなくてもいいです。輪切り唐辛子や、鷹の爪でも。というか、唐辛子は無しでもいいです。すみません、わたしの好みです。唐辛子が入ってたほうが、何て言うんでしょう、味が全体的にガッと持ち上がるんで、それが好きなんです。
そんなわけで、にんにくと唐辛子の香りをしっかりオリーブ油に移したところで、ベーコンを投入します。重なってくっついちゃってても、油の中を泳がせればするっとほぐれます。
ここもじっくり、カリカリになるまで炒めます。
というか、放置でいいです。その間に、玉ねぎを切りましょう!
玉ねぎ 1/8個
わたしは食いしん坊なので、1/6個くらい使っちゃいます。
5ミリ幅でくし切りにして、さらに真ん中から半分に!
カリカリになったベーコンにこれを投入して、中火でサッと炒めたら火を止めちゃいます。
火を止めちゃいます。
大事なことなので! 二回言いました!
ここでのポイントは二つあります。
一つ目は、玉ねぎを炒めすぎないこと。
普通に炒めてしまうと、ちょっとソースに負けて存在感が無くなってしまいます。食感を残したいところなんです。
二つ目は、フライパンをあまり熱くしないこと。
フライパンが熱いままだと、ソースを入れた時にたまごが固まってダマダマになってしまいます。それははっきり言って悲劇です!
そうならないためにも!
ここが本当に、勝負の分かれ目です! さあ、行きますよ!
……そういえば、今日は全然失敗してません。だってカルボは毎朝作ってますから、何もかもが慣れっこなんです!
おっといけません。改めて、行きますよ! クライマックスです!
前回同様、茹で汁をボウルに受けながら、麺をざるにあけます。
そして麺をフライパンの中にあけ、茹で汁はそうですね、麺の半分くらいが浸るくらいでしょうか、大体ですけどそんな感じでそれくらい入れます。
若干じゅわじゅわしますが、すぐに落ち着きます。
ここでじゅわじゅわ感が強いと、まだ熱すぎるということです。確実にたまごが固まります。そういう時は少し待ちましょう。
よし! ソースを入れましょう!
菜箸でたまごをぐるぐるして、フライパンにでろーっとあけます。お椀にへばりついたチーズも残さず入れましょう。
すかさず麺ごとぐるぐるします。固まるなよ、固まるなよ、と念を送りましょう。チーズが次第に溶けて、全体が均一になってきて、カルボナーラ感が出てきます。
ちなみに、茹で汁を加える量で、カルボの固さを調節できます。あと、塩味かげんも。ぐるぐる。ぐるぐる。いい感じです。
カルボナーラは、この、麺をざるにあけてからソースを入れてぐるぐるするまでの流れが、腕の見せどころなんです。
どうです! いい感じにできました!
では、引き出物のお皿をひとつだけ出して、盛り付けます。
べちゃっとあけちゃうよりも、菜箸やスパゲティ用の盛り付けフォークなんかを使って、流れを見せたり折りたたむように盛ったりすると、なかなか楽しいです。
最後に、もう一度黒コショウを振って、完成です! 所要時間は20分でした!
さて。では。食べましょう。いただきます。
うん、いつものわたしのカルボです。
いつも通りに、いい出来です。
カルボナーラは、材料はいたってシンプルです。
その代わり、奥が深いです。
使うチーズによって、塩加減を調節しないといけませんし、温度の管理もシビアです。ソースの固さも、玉ねぎの存在感も、ベーコンのカリカリぐあいも、スパイスも、本当、人それぞれです。
わたしが今食べてる最中の、このわたしのカルボは間違いなくカルボナーラだと思いますが、きっとイタリアでは、家庭ごとにその家のカルボナーラがあるんです。
そうです。カルボもまた、家庭料理のひとつなのです。
お姉ちゃんは昨日、結婚式を挙げました。これから涼太郎さんと、新しい家庭を作っていきます。
そしてこれから、他のどの家のとも違う、お姉ちゃんと涼太郎さんだけの家庭料理が、作られていくのです。
私もいずれ、そんなふうになるんでしょう。なれるのかなあ? そんな日が来るのかなあ? どうなんでしょう?
カルボを食べながら、来るかもわからない遠い未来に思いを馳せちゃいました。
今はわたしは、ひとりぼっちです。
未来はどのくらい遠いんでしょう。
今日は何をして、過ごそうかな……。
と、その時、私のスマホが鳴りました。着信です。珍しいです。電話をかけてきたのは……お姉ちゃんでした!
「海香、おはよう! もう起きてた?」
「う、うん……モゴモゴ」
「お昼くらいになるけど、今からそっちに向かうわ!」
「モゴっ!?」
「どうしたのって、それは……昨日、海香とあまり話せてなかったから」
「モゴっモゴっ」
そうなの? お姉ちゃん。わたしに気を遣ってくれてるの?
「ああそうだわ、お昼はどうしましょう。海香、よかったら一緒にどこか食べに行かない?」
そんな、水くさいです、お姉ちゃん! だったら、私も気を遣って仕返しです!
「おっ、お姉ちゃん! ん、んん! う、うちにおいでよ! そしたらわたし、作るから! そうだ、お姉ちゃんも一緒に作ろっか!」
「そんな、いいの? 海香! よろこんでお願いしちゃうわ!」
「いいよ、お姉ちゃん。あと、涼太郎さんは?」
「もちろん、涼太郎も一緒よ!」
「そうだよね! よしきた!」
えへへ、急に忙しくなっちゃいました。
どうしよっかな、カルボナーラ、お姉ちゃんに教えちゃおっかな。
お姉ちゃんの家庭料理、レパートリー、ひとつ増やしてもらおっかな。
あと、あとあと、昨日の結婚式のこと、色々いっぱい、お話したいです。
涼太郎さんも来るし、きっと、楽しいです!
えへへへ、ようこそ、三上夫妻! わたしのうちへ!
いっぱいたくさん、もてなしちゃいます!
元気が出てきました。
二人をお迎えするために、わたしはまず、お掃除と洗濯物から始めるのでした。
~つづく
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