JK(元♂)、DK(元♀)と和解する
アキナは、女子として初登校してから、1週間ほどで体の変化が安定した。
再度、病院で精密検査を受け、体の変化は安定したとのことで、お墨付きをもらえた。これからは、体育や水泳の授業にも参加せざるを得なくなった。
身長は女子の平均くらいになり、女子としては背が高めのイオリを見上げる感じになった。
ユキトから提供された衣類はランジェリーや下着も含め、全てがジャストサイズになっていた。今、着用している制服類や靴などは、ほぼ全てがユキトから提供されたものだ。
声もすっかり女性の声になった。
大きな胸とヒップ、くびれたウエストは、アキナを困惑させた。
男性からの視線を常に感じるからだ。
午前中に病院での診察を終え、登校している時、背後から男性に声をかけられた。
「おっす、アキナ。病院だったの? ボクもだよ」
ユキトだった。
ユキトも体型の変化が安定し、普通の男子として通常に生活できるようになっていた。元はかなりグラマーな女子だったとは思えないほど、精悍な体つきに変貌を遂げていた。声もすっかり男性の声になっていた。
アキナは、既に頭ひとつ分くらい身長差があるユキトを見上げて、挨拶した。
「アカサキか……おはよう」
アキナはユキトから胸やお尻に向けられる視線を感じた。
アキナが嫌そうに言う。
「あんまり、じろじろみないでよ」
ユキトが悪びれもせず言う。
「男の本能みたいなものだから気にしないで。
それに、以前は、アキナもそんな感じでボクのこと見てたよね?
人のこと言えないよね?」
アキナがバツが悪そうに言う。
「そうだけど……。
そうか、見られる側は、こんな感じだったのか」
ユキトが言う。
「まぁ、女子はいろいろ大変だってことだよ。
見られすぎるのは嫌だし、
まったく見てもらえないのも嫌、
常に注目を浴びたい子もいるし、
真逆の子もいる。
アキナはどんな女子になるの?
その容姿だといやでも注目されちゃうと思うけどね」
アキナが言う。
「……わからない。
確かに見ず知らずの人からエッチな目で見られるのはすごく嫌だね。
アカサキの気持ちがよくわかった気がする。
でも、自己満足とは言っても、
せっかく手間暇かけて自分磨きしてるのに、
もし、好きな人からも見てもらえなかったら、
確かに寂しい気がするだろうね」
ユキトが言う。
「そっか、たくさん悩むことだね。
これからはそれと向き合うしかないのだから。
完全にボクの責任だから許してもらうつもりはないよ。
でも、できる範囲での協力は惜しまないつもり。
あと、できれば前みたいに、『ユキトくん』て呼んで欲しいな」
アキナが呆れたように言う。
「ほんと、自分勝手だよね……ユキトくんは」
ユキトが嬉しそうに言う。
「ありがと。
あとさ、ボクの彼女のユカリは、ボクらのこと知ってるから、頼りにしていいよ。
下の名前で呼んであげてよ。
ユカリもアキナにはとても感謝してるからさ。仲良くしたがってる。
今は、ゲームも一緒にやってるんだ。もちろん夫婦やってる。
いつも女子だけで固まってないでさ、たまにはボクらも混ぜてよ。
昔のパーティメンバーもアキナのこと心配してるしさ。
今はね、ボクが作ったギルドにみんな参加してくれてるんだ。
高難易度コンテンツにも挑戦してるよ」
アキナが言う。
「リーダーはイオリだから、話はしておく。
知ってると思うけど、男子に興味がないメンバーだから、期待しないでね」
ユキトが言う。
「わかってる、楽しみにしてる」
二人は久しぶりにゲームの話をしながら、学校へ向かった。
アキトとユキナの関係は消滅し、アキナとユキトの関係が現実世界を塗り潰したのだ。
……
アキナの学校は屋内温水プールが整備されており、年間を通じて、水泳の授業が組み入れられていた。
アキナにとっては、女子として初めての水泳の授業だ。
アキナは、早めにプールの女子ロッカールームに入ると、ブラウスを脱ぎ、着丈が長めのTシャツを着た。スカートや靴下、ストッキングなどを脱いで、局部が見えないように気をつけつつショーツを下ろした。
ワンピースの競泳水着の上半身を丸めて、足を通し、大きなヒップに苦労しながら時間をかけて、胸の辺りまで着込む。ブラを外し、Tシャツを脱ぎ、競泳水着を肩にかけた。違和感がないように水着を微調整して、その後、鏡の前で再チェックした。
アキナは、イオリ達と合流する。
「おまたせ、みんな早いね。
早めに来たのに抜かれちゃった……」
リホが言う。
「水着がきつすぎるんじゃない?
ヒップでかなり苦戦してたよね?」
アキナが言う。
「でも、水泳の先生に相談してみたら、今のサイズでちょうどいいって言われた」
ユカが言う。
「アキナって力がないから仕方がないと思うよ?
握力とかかなり低めだったよね?」
アキナが言う。
「うん。女子平均を大幅に下回ってる……。
体が変化した影響みたい。
筋トレするようには言われてるんだけど、長続きしなくって……」
エリが言う。
「そういえば、缶ジュースやペットボトルの蓋を開けるのに道具使ってるよね?
何その女子力、可愛すぎない?」
隣のクラスのミチルが言う。
「もしかして、イオリに押し倒されたら、抵抗できない感じ?」
イオリが言う。
「うん。まるで負ける気がしない。
男子が女子を相手にする感じがわかる気がした。
私に抵抗するのはすでに諦めてるからね、アキナは」
ミチルが言う。
「あはは、押し倒したんだ?」
イオリが言う。
「まぁね。可愛すぎるのよ、私のアキナは。
体型も羨ましすぎるほどエロいしね」
リホが言う。
「アカサキとは大違いだね。
クラスの男子で腕相撲大会したら優勝しちゃったんだって?」
エリが言う。
「すごいね。
マッチョって感じではないのにね。
彼、女子に人気あるんでしょ?」
イオリが言う。
「らしいね。彼女持ちだけどね」
ミチルが言う。
「ほんと、アキナとは対照的すぎるね。
アキナは男子に人気あるみたいだしね」
イオリが言う。
「らしいね。私の彼女だけどね」
プールサイドに出ると、反対側のプールサイドで男子が準備体操を始めていた。
ユカが言う。
「アカサキも今日から参加か。
完全に別人だよね。
すっかり男子の体になってる。
トップレスになって恥ずかしくないのかな?」
エリが言う。
「すごいね。
細マッチョって感じだよね。
かなり鍛えてる感じだよね」
女子も準備体操を始めた。
ミチルが言う。
「男子の目線、アキナに集中してるよね」
イオリが言う。
「わかりやすすぎ。
まぁ、アキナの体型ならしかたないか」
アキナが言う。
「恥ずかしいから、そういうこと言わないでよ……」
以前はプールの向こう側で女子を眺めていたアキナは、複雑な心境だった。
性別が変わった物珍しさもあるのだろう、男子からの視線は容赦無くアキナに集中していた。
体操が終わり、授業が始まってもその状況はあまり変わらなかった。
休憩時間、隣のクラスのユカリ=タカモリが話しかけてきた。
「アキナ、隣いい?」
アキナが言う。
「タカ……ユカリか。何か用事?
私のそばにいると男子の視線攻撃の被害に遭うよ」
ユカリが言う。
「あはは。おもしろいね。
ユキトくんから聞いてるよね?」
アキナが言う。
「うん。よろしくね、ユカリ」
ユカリが言う。
「こちらこそ、よろしくね。
ユキトくんのことごめんね。
無理やり性別交換しちゃうとか……」
アキナが言う。
「取り返しがつかないから、もう、どうでもいいよ。
まえに大泣きして吹っ切ったから。
いまは女子を頑張るだけ」
ユカリが言う。
「そっか、ユキトくんと和解してくれてありがとね。
ユキトくんにとって友達って呼べるのアキナくらいだったから、
ユキトくん、嬉しそうにしてたよ」
アキナが言う。
「そっか。それなりに慕われてたんだね。
利用されてるだけかと思ってた」
ユカリが言う。
「長時間、一緒にいたのでしょ?
嘘でそんなに長時間はいっしょにいられないよ」
アキナが言う。
「……まぁそうかもね。
たまにはゲームを一緒にプレイするものいいかな。
ユキトくんとゲームするのは楽しかったからね」
ユカリが言う。
「うん。そうしてもらえると嬉しい。
ありがとね、アキナ」
アキナが言う。
「でもさ、ゲーム内の元嫁って私の立場、気まずく無い?」
ユカリが言う。
「私は気にしないよ?
ギルドの人たちも今どうしてるのかよく話題にしてるしね」
アキナが言う。
「どう言う理由になってるの?」
ユカリが言う。
「普通に喧嘩別れ。
原因はユキトくんが100%悪い」
アキナが言う。
「あはは。そうなんだ。確かにそうだ。
ならいっか。いっしょに遊べそうだね」
ユカリが言う。
「私も楽しみにしてる」
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