葵 二十歳

 二十歳になって、詞は筋肉が動かなくなる病気にかかった。


 進行し続ければ、やがて瞼すら上がらなくなる病気。

 講義にも実習にも出られず、資格を取ることはおろか、卒業することすら不可能だと言われた。

 それを聞いた葵は、彼に自作した人型ロボットをプレゼントとした。


「カメラとマイクとスピーカーがついてる。少し訓練すれば、ものを掴んだり、動かしたり、歩かせることも出来るわ」


 それは、動けない詞の代わりの身体だった。詞は、まだ動く手を使って、ロボットの手でものを掴んだり、足を動かしたりした。

 詞は資格をとることは出来なかったが、大学を卒業するだけの単位をとることが出来た。

 それは福祉機関の目にも止まり、発明した葵と、その初ユーザーである詞は、一躍有名になった。


 詞は、ロボットを通して数年働いた。

 葵は、いずれ完璧に固まってしまう詞の身体を考え、電気信号だけで動けるようなシステムを作ろうと考えた。

 しかし、詞の身体は葵が想像していた以上に悪くなり、もはや詞はずっと眠っている状況となった。

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