葵 中学生の時

 人はどうやら、自分で作り上げた他者と現実の他者が違うことにショックを受けるらしい。そして自分以外の人間は、その差異がよく発生するのだ。


 故に葵という天才少女に憧れを持った他者は彼女の発言に一挙一動して壊れ、逆に彼女は全てを理解しているために幻滅する、なんて感情は抱かない。

 人は他者と接する時、得ることも無くすこともあるけれど、葵にはもう、得る物も失う物もなかった。例え友人に嫌われたとしても、彼女の頭の中には友人がいたのだから。しかし、友人が葵を嫌悪し遠ざかることは無い。差異があればあるほど、友人は葵から嫌われることを恐れ、服従した。


 友人にとって、葵はもはや創造主であり、唯一神であった。

 葵はため息をついた。

 結局現実の人間もAIも変わらないではないか。決まった答えだけしか許さない。

 今の葵は、モノで見立てずとも、周囲を思うように動かすことが出来る。

 小学校一年生の頃はクラスメイトを理解するのに一週間かかったが、今では五分話せば十分だった。

 これだと、人形遊びの方が楽しい。

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