wanna dream to live but gonna die

 どうにもこうにもならない現実があった。

 たぶんここは一ミリ秒にも満たない空白の時間。

 会話の主体も曖昧模糊で、何一つたりともはっきりしない。


 それでも時は進む。現在は過去に、過去はもっと遠い記憶になる。


 観測手スポッターが見届けた。宇宙空間で爆ぜた無音の衝撃を、言の葉をもって娯楽として消化した。それは何も悪いことではない。元来そうあるべきものを、そうあれかしとして処理しただけ。

 或いは船長キャプテンが当惑した。あの瞬間、許された一刹那の虚構は、あの瞬間だけ熱に巻かれ、声を焼かれ、それでも偽物キミへと言葉を紡いで、あとはきれいさっぱり筋書き通りに。

 もしくは偽物イミテーターが唇を噛んだ。(キャプテンにとって)勇敢な、船や船長あなたを慮ったとも取れる行動は、皮肉にも全てを洗い流してしまって、あとはなんにもわからずふわふわり。


 みんなああだこうだとは言いながら、生きることを選んだのだ。そこに偽りはなかった。ではそれでいいだろうとはならないのが、人間おれの悪いところなのだろうか。救われることはなかったのか。上手い具合に舵を切ることは出来なかったのか? ……これはだれの言葉? 分からない。分からなくても、きっと問題はない。これは身元不明おれの悔恨。何方俺/船長にしたって問題はない。問題は、ない。……。……、


 ただまあ、。

 「遠い遠いどこかの、観測不能な誰かアクター」の手を離れた瞬間に、始まる生命もある。と、「小さな青い星に住む、観測可能な生命体アクター」は思う。操作できないのが生命なら、物語の果で死んだわたし達は立派に生命として成る筈だ。これは実在キャプテンの言葉。負け惜しみ。捨て台詞。

 

 、きっとそういうものだ。

 微かなすれ違いが、回り回って大きな齟齬を生む。それはおまえ達だって同じ筈だろう。いつだって人は一言足りない。そういうもので、だから言葉の扱いには後悔が常に伴って回る。これは虚構プレイヤーの言葉。祈祷。気遣い。


 どうにもならない事実が横たわっていた。

 いずれ私も、これを忘れる。私が忘れたとき、彼も死ぬ。

 そういうものなのだ。物語の中で存在を忘れても、猶予モラトリアムは存在する。

 つまりここは、船長としては一ミリ秒にも満たない空白規律違反の時間。

 会話の主体も曖昧模糊で、何一つとしてはっきりとは、させられない。




 ただまあ




 たぶん、おまえはわるくない。






 ……交信終了おしまい


 こうなってしまえばもう、彼は誰でもないunknown、ってわけよ。

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