快晴

 なんともなしに。

 本当になんともなしに、電話を掛けてみようと思った。

 昨日と今日の隙間に確かに在った、泡沫の七日間と同じように。惰性で、電話を掛けようと思い立ったのだ。


 連絡先の下から五番目に、彼の名前はある。

 一、二、三、四、五。六回目の着信音の半ばで、彼は出た。


「もしもし」

「もしもし」

「……何」

「いや、声、聞きたくなって」

「彼女じゃん」彼は笑う。

「デートした仲だしね」私も笑う。


 そこから、暫く沈黙があった。

 画面の向こうにいるのかお互いに分からないほど、完全な静寂。

 ふと、そこで聞いてみたくなった。少しだけ、意地悪な質問を。


「ねえ、……、」言葉を継ごうとしたけれど、聞けなかった。

「何さ」彼は眠そうな声でそう聞いてくる。

 頭を暫く回した後、ふと、思い付いた言葉を口にしてみる。

「あのさ」

「ん」

「……来週、デート、行かない?」

 彼はふっと笑った。

「やだね。アンタ、適当に遊ぼうって魂胆だろ」

 冗談めかした態度で、彼は言う。私もつられて笑った。

「そんなわけないよ、こっちはいつだって本気さ」

 おどけた口調で、そう言ってみる。彼は少しばかり大きな声で笑った。

「はは、乗った乗った。

 ……で? どこに行くつもりなの?」

 答えは一つだった。

「映画を観たあと、遊園地に行こう」

 彼の返事も、予想通りだった。

「却下」

 明日は快晴の予報だ。明日も明後日も、そのまた次の日も。

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