第11話 ENDmarker.

 森林公園のデートは、滞りなく終わった。


 入り口に、戻ってくる。ベンチの近く。


 もともと、見所がそこそこある場所だから。遊園地なんかよりも、よほど楽しい。


「たのしかったな」


「ローラーコースターでおしりがいたい」


「だから段ボール敷けって言ったじゃん」


「行けると思ったのよ。短めだったし」


 おしりをさする彼女。


 デート開始前、この入り口で。ここで、衝撃的なことを言った。たぶん聞かれたくないことだと思って、とっさに聞いてないふりをした。


 もしかしたら、何か、心が不安定なのかもしれない。


 聞くのが正解か。聞かないのが正解か。


「あのさ」


 二択に追い込まれたときは、選択肢を広げるのが、正しい判断。


「次も、どこか行くか」


「次って、いつよ」


「いつだろうなあ。予定が空くのが分からねえんだよなあ」


「じゃあそのとき誘いなさいよ。いまどきの若い子みたいな適当な誘いかたしないで」


「ごめん」


 選択肢が広がらない。次に会う算段が、つかない。


 少し、不安になった。


 捨てられるかもしれない。


 でも、それは、彼女にとって、最善の選択なのだから。引き留めようとするのは、間違っている。


「次も、森林公園がいい」


「あのさ」


 無言。


「どうぞ」


「いや、次の予定を」


「森林公園がいい。それだけです。あなたの番」


 三択目が、いちばんしんどい。でも、言っておいたほうが、いいかもしれない。


「別れたいなら、いつでも言ってくれ」


 彼女。無言。


「俺には、その、そういう、なんというか、深入りするような、そういう、ものはないから」


「どういう意味」


「そういう欲求が、俺にはないから。満足させられない」


「聞いてたの?」


「ごめん」


「じゃ、別れよっか」


「ああ」


「じゃあね」


 彼女。手をひらひらさせるしぐさ。

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