第4話

 放課後。


 遊びに行こうという友だちからの誘いを今日はごめんと断って、学校を出る。


 一度、誰もいない家に帰宅して。着替えて。


 高校生よりも上に見えるように、少し化粧をして。誰からも誘われない程度の、ラフな格好にして。


 台所で、料理。


 夜ごはんの下ごしらえと、ついでに、おにぎりを三つ。


 鮭フレークを切らしていたので、おかかが二つ。梅がひとつ。


 おにぎりを持って、家を出る。


 テキストメッセージ。今日は、駅前でティッシュ配り。


 駅前に出た。


 そこらへんを、なんとなく歩く。ラフな格好にしてあるので、特に声はかけられたりしない。イヤリングも大きめのものを付けてきた。


 なかなか、見つからなかった。あの顔なら、そこそこ人だかりができそうなものだろうに。


 駅前。よくいるようなデザインの、マスコットキャラ。こちらに近付いてくる。


「あ」


 手をひらひらさせる動き。


 こいつだったのか。


 裏に回って、人通りの少ないところの建物に入った。


「ふう」


 マスコットの顔が、とれる。均整のとれた、彼の顔。


「ばかね」


「なにが」


「顔で釣るのがバイトじゃないわけ?」


「やっかみを受けてんだよ。バイトリーダーに」


「女性?」


「みにくいな、女ってのは」


「綺麗な顔の男が言うと、むかつくね」


 おにぎりを、渡す。


「飲み物は自分で買って」


「ありがとう。助かる」


 彼。おにぎりを食べはじめる。


 無言。おいしいとは、言わない。


 そうでしょうね。あなたが作るほうが、おいしいもの。時間がないから、私が作ってあげてるだけ。味ではなく、ごはんを作る時間と、ごはん代の節約。それだけ。


「じゃ。行くから」


 詮索しない関係。深まりもせず、だからといって別れもしない、友だち以上恋人未満。


「ああ、明日」


「明日?」

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