まだら雲

えるまだらぐもからのぞく空色が

昼間ひるまよりもえているような

空の下

誰をものろいたい初老しょろうの男が

うつ向きながら歩いていた


男の視界しかいうつるのは

みずからの足と、赤くまったアスファルト

それだけだった


ふと

男は

誰に向けたわけでもない

呪いの

言葉を

つぶやいた

と、同時に地球の裏側うらがわ

疫病えきびょうくるしむおさない子供が

息を引きとった

母親はなげき悲しみ

神を呪った


燃えるまだら雲から覗く空色が

昼間よりも映えているような

空の下

誰をも呪いたい初老の男が

うつ向きながら

立ちくしていた


男の視界に映るのは

自らの足と、赤く染まったアスファルト

それから、誰かの落とした長財布ながざいふ


男はそれをひろいあげ

中身をあらためると

しけてやがる

と、てた

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