03






悪の塔がまた大きく育った。


塔は…見間違いではない……日々、少しずつ大きくなっている。

塔が大きくなるとともに、塔の近くの草が黒くなり、広くなり…


黒い森と草原ができた。


勿論、そこへ立ち入ったものも皆消えた。




町民は引っ越しを始めた。



わたしはここがすきだった。 動きたくない。


おとうさんとおかあさんも動けなかった。


そもそも引っ越すお金がなかった。



お金が無い者と、動けない年寄りが町に残った。



じりじりと黒い草が迫ってくる。





昨日はあそこだったのに。  今日はここまで来ている。




なら、うちにくるまであと……



草の数を数えて、お父さんとお母さんは怯えていた。


家なんか捨てて逃げたい。


そう言って怯えていた。



お年寄りもいっぱい、いっぱい、おびえていた。





私は塔を見上げた。




「悪め。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る