第12話 絶対また来る!こんどはひとりで

みなさんの共通目的地はスペイン広場ということで、途中 私の希望でカンピドーリオ広場に寄ることにします。


ぞろぞろと9人、私は地図を持って歩きます。

ここらへんには バールも何も 一休みする所は全くないようです。


女学院娘が私のそばに来て

「あのお、これから行くところは美術館ではないですよねえ?」

「ミケランジェロが設計したという市庁舎の広場なんです。

ローマの丘の一番高いところ。」 付け足した。 

「フォロロマーノも眺められる場所があるそうなんです。」

「あ、広場に美術館あるはずですが。」もうひとつ付け足しました。


お嬢「あ、わかりました。」と女学院ママのところに行く。


またやってきて

「あのお、母がもう疲れてるので、

食事かお茶かどこでも入れるところでもあれば休みたいのですが」

(もしかして 私を頼ってる?_)


「そうですよね。でも 見渡す限りないですよねえ。」


私は根拠のない責任感を抱きながら、きょろきょろとローマを歩く。

私は 絶対に添乗員なんかやらない。


ふーこさんはと見れば、鉄関係3人家族の中にいる。寄っていく。

「あのひとだって、自分で少し考えればいいのよ」という話声がする。

「鉄関係姉妹」がぼそぼそ話している。標的は女学院ではない。

どうも内輪のもめごとか。ご主人への文句? 良妻賢婦の見本のようで、いつもご主人のそばでニコニコだったのに。

今回 食品重役の奥方も、この鉄関係奥様も とっても控えめ、妻の鏡! って

驚嘆まで感じてたのに、ちょっと違うみたいだ。


「鉄関係」のご主人はおとなしく後ろのほうからついてきている。

夫が頼りにならない男だというのが許せない場合はそりゃああるけどさ、

でもここはローマだから。おさえておさえて。


ようやく広場に近づいているようだが、

この道から入れるんじゃないの、いや、こっちじゃないの?と 

ふーこさんまでが 「これであってる? あとどれくらい?」とか聞いてくる。

(私もローマ初めてなのよ、実は。) 

スムーズに案内できない私が悪いの?


 広場の入り口階段の下にたどりついた時には汗びっしょりで 

長い間訪れてみたかったあこがれの場所に来た感慨より、

案内できたことにホッとしました。

以前テレビで ローマ市庁舎を見て、楽しみにしていたのです。


市庁舎をりっぱに見せるためのミケランジェロの広場建設の工夫など。

でも その時はそんなことすっかり忘れていたのでした。

広場の幾何学模様もただ歩いていると気がつかないものです。

建築の構想の偉大さを実感する余裕なかったなあ。


とにかく皆さんを休ませてあげなければならないというプレッシャーがあって、ゆっくり楽しむ余裕がありません。 (なんなんだ。これって。)


それでも正面の市庁舎、両脇の美術館三方に囲まれた広場は 

歴史が刻まれた荘厳な雰囲気です。 

中央には マルクス・アウレリウスの騎馬像が存在感あります。

でもこれはレプリカだそうです。

両脇の美術館のひとつ

コンセリヴァトーリ宮殿美術館の中に本物があるそうです。

今回美術館はスルーです。


それでも絶景スポットには行けました。


古代都市ローマを実感するフォロロマーノを見渡しながら、この旅でなんども去来した思いを口にしたものです。


「また来る、絶対に。」

ふーこさんが 「お金貯めなきゃね」 と相槌をうちました。


 古代遺跡を街のど真ん中に残しておくって 簡単なようで ものすごく難しいことですよね。

ローマの税金は高いと聞きますが、遺跡維持のためにもだいぶ使われているのではないでしょうか。

 丘からの眺めに後ろ髪をひかれながら、 スペイン階段方面へと下ります。


 初めてのローマで 9人で食事をするところを探すって 下調べもしてなくて 至難の業です。

ふーこさんと二人で歩くはずだったし、それにはなんの縛りもないので、いきあたりばったりでよかったはずなのです。


 うろうろきょろきょろと9人が歩きます。


ようやく ここでいいよここで。と入ったところは なんか場末の安食堂ってな感じのとこ。でもくたびれているし、とにかく座れたらいいか。

 

本当は場末でもなんでもなく とても人通りの多いところなんですけどね、軽食や飲み物を売っていて、ゲームセンターも中にある。レストランというのではない。イタリアではこういうお店をなんていうのかな。


 「鉄関係」ファミリーが先にご自分たちの分を(スパゲッティやサラダなど)を注文してきたら もうそれだけで9人が充分おなかいっぱいになる量が運ばれてきました。


 初め 女学院ママがそんなもの私は頼んでないとウエイターに強く言って、ごたごたしましたが、誤解が解けて、

ようやく昼食にありつけたのでした。

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