第9話 ワインの夕べ ツアーの面々


 ディナーはタベルナ・グラッキにて。

 ツアーのメンバーでの食事は最後ということで 今回の食事はワインがたっぷりついています。


 シーフードの前菜、ボンゴレのパスタ、えびのグリル、フルーツケーキ

案の定 ふーこさんのひとこと

「うちで友達とするランチとおんなじだわ。。。」まあまあまあ。


 東京組のほうにいる ふーこさんとひそかにエリート夫婦と呼んでるカップルは、ワイン大好きなようです。彼らはいつも手をつないでいるし、お子さんがいないから若いと思い込んでいましたがご主人はそうでもないようです。

 

卒業年次から、ふーこさん後でしっかり計算してましたっけ。

「ふつうに大学卒業しても39歳、浪人か、大学院行ってたら40歳とうに過ぎてるよ。どうりで髪の毛が薄いよねえ。」 きついです。


彼の就職の時は まだまだバブルの時代。

「内定は簡単に何社からももらいました。なんもしなくて就職できた。

今の新入社員を見てると申し訳ない気がしますね。ほとんどみんな何かの資格を持ってきますし、相当勉強してますよ。」

そっか、我がこどもたちの年代の就職は厳しいのね。


女性はどう?と聞いてみる。

「女性社員は今はめったなことでは退社しなくなっているので、

会社に若い女の子がいなくなってるんですよ。

だから若い男の子が結婚できなくって独身多いですよー。」


そうか 女性の入社 結婚 退社という従来はノーマルサイクルだった流れが

なくなったことが 男女の出会いを少なくしている一因なのね。


ていうことは 男性社員ばっかり採用するから良くないのよね。

このさい女性をどんどん採用するのがよいよ。


女性の鋭い知性が日本を活性化するし、

ぼやーっとしていた男の子たちが、目覚めてきりっとするかもしれない。

独身者も減って 子どもも生まれるって いい循環になると思うけどね。


 日本も本当の現実味のある男女雇用均等の状態になれば 案外結婚する割合が増え、こどもの保育環境も整い、いいことだらけだと 私は思うのですけれどねえ。

 女子学生の就職難がはんぱではないと聞くにつけ、産む性であることの複雑な思いにとらわれます。


 エリートだんなが 私たちに聞く。

「同期入社ってほんとですか?」

 ほんとですよ。私とふーこさんは東京のある商社の同期の花なのです。


「いーですねー、長い間のお友達と海外旅行なんて」とエリート奥さん。

と うらやましそうに言ってるのかと思うから

「そうでしょー。今度は お友達と旅行してください。

ご主人 奥さんを出してあげてくださいね。」と

 つい エリートだんなに言ってしまったら。


「そりゃーいいですよ。行っても。でもねー」と エリート 奥さんの方を見る。

奥さんと顔を見合わせて

「でもねー。ねエー べつにねぇー。友達よりねえ。。。 あははは」と奥さん。


あ、 そう。 そうか。友達とよりご夫婦か。 

お二人いつまでもご一緒がいいよね。 失礼しました。

(あと10年たったら 気ぃ 変わると思うけどね。)


「わたしたちの時は 女性社員が男性社員のために お茶くみしたけど、今はそういうのないの?」

エリート奥さんも ハイテク新婚奥さんも 即

「そういうのは まったくないですねー」


「わたしたちの時は 

自分の課の人のカップと、

お砂糖とミルクを入れるか入れないかなんてことを覚えるのが 

最初の仕事みたいなものだったよね。」と私。


「コピー室ばっかり行き来してね。本当に ばからしかった。」

「タバコ買いにいかされたりしてね」

ふーこさんは 重役秘書だったのです。

「おんなじ大卒で入社しても男の子と1万円以上の差があったもんね。お給料」

大昔のぐちを言ってもしかたありません。 話題をかえましょう。


 ハイテク新婚さんは 中国への転勤があるかもしれないんですって。

同じ職場で共稼ぎしてるのに ご主人にそういう辞令がおりたらどうするの?と聞いたら 会社やめてついていきます。 という答え。

 でもそれって変だよね、奥さんにも 中国への辞令出してくれればいいのにね。って言ったら

 それはそうですよね。って笑ってたけど、

共稼ぎの社員への転勤などの配置問題は会社側も頭抱える問題なのでしょうね。

女性活用必要って思うけれど、簡単にいかない問題たくさんある。


どうも ジェンダーっぽい話に傾いてしまう私です。


さて、明日はローマ自由観光ですね、っていう話になったら 

東京組の同窓生夫婦(なんと!だんなのほうが同じ高校だったことが、ひょんなことで判明したのです。)は 

ローマはパス。そのかわりにナポリまで足をのばすんですって。

 「私はね、ナポリがなんなのか さっぱりわかりませんがねえ、この人が全部決めてるから 付いていくだけですわ。」というご主人のそばで

奥さんはたばこぷかぷか。

「私たち、去年ローマ8連泊ってしてんのよ。」と。

 

この同窓生だんなは相当な酒豪のようで、ワイン飲めるから付いてきたという感じ。

 エリートだんなとふたりでぐいぐいと。止まりません。


この同窓生だんな、私と年齢近いし、話詰めればいろいろ共通項出てきそう。

でも横のプカプカ奥さんのムードが 

だんなとあまり話をしてはいけないと感じさせるもんだったので、控えます。


私は、関東出身。

だから、住んでる関西で同じ学校の人になんて出会いません。

なんで イタリアくんだりで出会うのか。


隣の女学院母娘と大阪姉妹のテーブルのワインはちっとも減ってないので、

同窓生たちに もらってあげることにする。


みっちゃんが「気が付かないで ごめん。」て とってくれました。

「みなさん、お飲みになられるのねえ。。。」ふふふ と女学院おかあさまが とても上品にお笑いになりました。 


添乗員さんの仕事の範疇ではないだろうけど、と 

ちらっとSさん伺うと、Yさん東京添乗員とすっかりくつろいでいる様子。

わたしたちのせいでお疲れ様でしたね。と 放っておいてあげることにする。

 

同窓生旦那の奥さんも アルコール強いらしい。

「この人は 病院の薬局をとりしきってるんですよ」とだんなが教えてくれた。

「大きな病院のね。」 奥さんは ワイングラス片手に たばこプカプカ。ただ笑ってる。

 薬剤師さんなんですね。ばりばり働いてご主人と同等に稼いでるって感じ。

 ご主人と対等の関係というムード めっちゃしっかり伝わってきます。


でもさあ、

 「薬扱ってる割に たばこ離せないんだね。」 ふーこさんは 言わずにはおれません。


 食事も終わり ホテルに帰ります。

明日は システィーナ礼拝堂のツアーが午前中にあります。

午後はどうするか まだ決めていません。

これからガイドブックを見て計画を練ります。

ローマは見たいところだらけで、たった半日で有意義に過ごせるでしょうか。


山田重役さんに、トランスを貸してあげました。


「デジカメが充電できないんですよ。」と困ってらした。

度々海外出張なさるお偉いさんなのに、 

いつもは秘書さんなんかがいたれりつくせり、

個人旅行はハードル高かったのでしょう。

デジカメの充電器は持ってらしたけど、

日本とは電圧違いますもんね、使えないですよね。


「わたしもさあ、本部長から どうでもいいことばっかり言われてたわ。」

「会社で偉いおっさんて 使えない。」

ふーこさんは OL時代を思い出しています。

  つづく



    


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