第3話フィレンツェ やってしまった!
朝6:40までにスーツケースは部屋の外に出しておいてください。
出発は 7:30.
話には聞いていたけど、団体旅行のスケジュールはきつい。
食事におりていくと、もうみなさんお揃い。
どういうわけか、ふーこさんと私はいつも最後。集合時間よりはやいのにもかかわらず。
食べたら あわただしく、出発。
ホテルの前からボートに乗り込む。
屋根のかかっていない後ろの席が眺めが良さそう。
ホテルの前から狭い水路を行き、広い運河に出ると、満員の水上バスが行き来している。仕事に行く人たちで満員の様子。
月曜の朝だということに気がつく。
運河の両側に立ち並ぶ建物のファザードはどれも美しい。ゴンドラには乗らなかったけど、この船で充分満足 ということにしておこう。
「あれ、またリヒャルト橋?」 と馬鹿なことを言ったものだ。
もうたっぷり10分以上は乗ってるのに、ホテルのそばのリヒャルト橋のわけないじゃない。すぐにこれは違う橋って気がついたのに、口に出てしまっていた。
隣に座っていた、エリート奥さんに
「いえ、あれは、スカルツ橋です。またホテルに戻ってしまったら大変。」とうふっと笑われた。
修復中の部分にかかっていたカバーが似てたので、つい一瞬錯覚してしまっただけなのに。。。
船を下りる。
フィレンツエに向かうバスが待っている駅前広場、
電車やバスや車で来た人々はみなここまで。ここからベネツアの街には、自転車さえも入れない。今度来ることがあったら、ゆっくり歩きまわりたいものだ。今回は下見。そう割り切っていったん さようなら、ベネツア。
スカルツ橋を渡って 足早に街中へ仕事に行く人々を最後に眺めながら水の都に別れを告げる。
お昼前にフィレンツエ到着。
サンタ・マリア・デル・フィオーレ教会は、花の聖母教会と言われていて、その教会を抱く街ということなんです。との S添乗員さんの解説に
「花がいっぱいある街だと思ってたわ。」とふーこさんは言ったものだ。
部屋で荷物を解く暇もなく、全員で駅の近くのレストランテへ。
「日本人の団体は、隔離されてるんじゃないのお。」とふーこさんがつぶやくのもしかり、ずうーっと奥の窓のない席に案内される。ツアーに食事が含まれていると楽ではあるけど、ここまできて 日本人と団体行動しなくてもいいな。
メインのポークロースはしょうが焼きと同じ味。
「もしかして 料理 日本人向きにしてない?」
「まあまあ、そういちいちひっかからないの。」 と、こんどはふーこさんにいさめられた。
昼食後は自由行動。ふーこさんとふたりになる。
日本への絵葉書を出すのに、駅の構内にある郵便局に行く。
切手はどこで買うのかなあ、タイミングよく添乗員Sさんがやってきた。
彼女も用事があるらしい。
「そこに並ぶんですよ」と教えてくれて 地元の人の長い列につく。
しばらくSさんとしゃべってたら、後ろに並んでいたイタリアの奥さんが 「切手だけならあっちよ」と空いている窓口を教えてくれる。
全く違う窓口に並んでいたらしい。S添乗員さんは、知らん顔してた。
切手は80セントでした。
ポストにいれようと思ったら今度はどの口にいれたらいいかわからない。
通りがかりのおばあさんに聞いたら 親切なんだけどイタリア語なので参った。
若い女性は英語で教えてくれた。英語、得意じゃないけど、英語圏意外ではそれなりに救いの言語。
近くに教会がある。サンタ・マリア・ノッヴェーラ教会。
ふーこさんは 気がのらなそうだったけど、ただなんだし、ここ有名なとこよとひっぱって入る。
ゴシック建築の教会。ベニスのサンマルコ寺院を見てきた後では 簡素に感じるのもしかたないか。感覚が少し麻痺してるかもね。
マサッチオの三位一体の壁画の前には先生に説明を受けている高校生くらいのグループが。英語を聞き取ろうとしたけど、無理。
よくわからず ただ眺めてきた。
キリストの下にいる弟子(?)の法衣のピンク色が非常に美しかった。
後で調べてみたら、マサッチオって、フィレンツエの象徴花の大聖堂サンタ・マリア・デル・フィオーレ教会を作った天才建築家ブルネレスキの親友で、若くして謎の死を遂げた画家でした。
当時 宗教の解釈やら、壁画の仕事がらみやら ごたごたの種はたくさんあったのでしょう。暗殺されたのかもね。
それに ここで レオナルド・ダ・ヴィンチがモナリザを描きはじめたということだ。
ほらね、入ってよかったよ。
この教会の付属の薬局があるというので 行くことにする。
この旅ではアロマオイルを探すことも目的のひとつだったので、わくわく。
その昔、広い薬草園で修道士たちが薬草を育て勉強し、薬を作ってたことを想像し、ロマンに浸る。また、裕福だった家族の私的な礼拝堂などが施設に利用されていて、その荘厳な建築意にもため息。
残念ながら 望んでいたアロマオイルはなかったので、せっけんと、夫のおみやげにシェービングクリームを買って帰ることにする。
もう少しゆっくりしたい気分だったが、ふーこさんの「フィレンツェの皮製品、買わなきゃ!」発言が多くなってきたので そろそろ限界と、ショッピング街にくりだすことにする。
このとき ホテルが近かったのだから 買った紙袋を置きにいったん帰ればよかったが後の祭り。
明日は団体での市内観光の予定が入ってるし、フリーの時間は今日だけと焦ったのがまちがいのもと。そのまま街の中心に向かった。
フェラガモの本店は建物はりっぱだったけど、品数は多くない。日本人の男性の店員がそばに来て、日本の半額ですよと言うが それでも 高いよね。
見せてもらうだけで、失礼しました。
アルノ川に出て有名なポンテ・ベッキオでも見ようと思ったらひとつ西の橋のたもとに出た。
そのまま 川に沿ってベッキオ橋のほうに歩く。
途中で革のお店に入ったら高級なお店で 息子への革ジャンを探してただけなのでリーズナブルなのでいいのだと、 すぐ出ようとしたら、店のおにいさんが、この店は歴史があって、工場はアルノ川の向こう側にあってとかどうたらこうだらとなかなか放してくれない。
この店の息子でデザイナーだというこの若いおにいさんが 自分で店の商品の皮コートを着て、「かっわいー」とまさに日本の女の子があげるうわずったような黄色い声をまねてしなをつくるので苦笑してしまった。
日本ではそれは男の人への褒め言葉ではないよ と説明したら
「いいの いいの わたしはゲイだから」って
「ほら、あそこにいるのが 私の恋人」って店の奥で仕事してるひげのおにいさんまで紹介してくれた。
そばできれいな女性の店員さんはにこにこ笑っている。
「私、ゲイの人と話すの初めて」ってふーこさんが言ったら、「あらそうなの。 日本にはいないの?ここイタリアでは普通よ」と、もっと話したらおもしろそうだったけど、微妙な話についていけるほどの英語力はないので、早々に退散することにする。
ベッキオ橋に近づくにつれ ものすごい人。
すでにだいぶ歩いていたし、混雑のベッキオ橋を渡る元気もなく、橋のたもとを街中のほうへと曲がる。
その鼻面をなでると またフレンツエに戻れるという言い伝えがあるといういのししの鼻をなでて写真を撮る。
添乗員さんたちが教えてくれた革製品のお店を地図を見ながら目指すが、途中にデパートがあるので、寄り道する。
「日本のイトーヨーカ堂かビブレかなあ。」ふーこさんがぶつぶつ。
イタリアでは 専門店のほうがグレードも品揃えも格段に良いようだ。
いつものように ふーこさんが、「足が痛い。」と言い出した。彼女は、決してぺったんこのおばさんシューズは 履かない。
旅に華奢な美しい靴はいてくるか!?。と空港で思ってたけど、やっぱりね。
すると、タイムリーに こんなメッセージがエレベーターの横に。
目に就いたのは 日本語だから。
『眺めのよいティールーム 5F』。
エレガントなティールームではないが、なんと
フィレンツェのシンボル 花の大聖堂が目の前にある。ジョットの鐘楼よりちょっと低いだけ。
「鐘楼に 女学院おくさまが 上るって言ってたわ。」とふーこさん
「のぼってみようか?」と返事すると、
「ここに来たんだからもういいじゃない。」と足をさすりながらふーこさんは言う。
そうね、あっちは414段の階段を上らないとこの高さまで上れない。
下を見下ろせば 小さな凱旋門のある広場。
街中が全部美術館と言われるフィレンツエを実感できる。
カプチーノで元気が出たので、いよいよ本格的にショッピングモードに。
ブランドのバッグも服も素敵だけどね。イタリアでも結構な値段する。
リラの頃は良かったなあ と山田さんが言ってたけど、ユーロになって、すごいインフレらしい。
あまり、日本で買うのと違いがないような気がする。
メイン通りから路地に入り、革のジャケットがたくさんあるお店に入る。
ここのおねえさん、英語を上手に話す。今まで 日本語を話す店員さんばかりに辟易していたので、日本人に媚びない様子が良かった。
息子用と 自分にもひとつ、ふーこさんも 気に入ったのを安くしてもらって買うことにする。
免税の手続きより、現金でもらったら その分お安くするというので、半分ユーロで残りをカードで払った。
どういうわけか それまで支障なく使えていたVISAカードがこのお店の機械に通らない。えーおかしいなあ、と動揺してしまう。このおねえさん悪い人じゃないかしら?などと思って。
もう1枚のイギリスの銀行のカードはうまくクリアーした。
ふーこさんも キャッシュとカード両方使って購入。
めでたしめでたし、いい買い物したと 機嫌よく ホテルへと帰りかけたのだ。
そのとき まだ、6時半をまわったころだった。
7時半にホテルのロビー集合、全員でディナーの予定だった。
ドゥォーモをめざせば余裕でホテルに帰れる。
私たちは るんるんるんと花のドゥォーモのわきを通り、道端で私たちに「さいたまけーん」と呼びかける店の店員の若者に、???「オーサカあ。」などと笑いながら返してました。
ホテルはどこかなあ、こっちこっち この信号を渡ったらすぐというふーこさんの後をついて歩いて前のふーこさんの手にある紙袋を見たとたん、私は大変なことを思い出しました。
サンタ・マリア・ノッヴェーラ教会の薬局で買ったおみやげの袋をさっきの革のジャケットを買ったお店に忘れてきてしまったのです。
ぎゃー、今戻れば あるだろうからと走って戻ることしか考えなかった。
もうすぐにホテルだったんだから 戻ればよかったのに、それか ふーこさんだけでも帰ってもらえばよかったのに。
でも 近かったのよね、お店は。すぐそこっていう感覚だったので、一心に走りました。
一回 迷った曲がり角があって、ここは違うんじゃないというふーこさんを無視して私は曲がってしまいました。
とっとことっとこ走って、なんかやっぱり道が違うみたい。もう暗くなってるし、迷ったようだ。 それでさっきの皮のお店の袋に大きく書いてあった住所を、道行く人に見せて教えてもらいながら走りました。
後から解ったのですが、 このことが事態を悪くした原因だったのです。
全然見知らぬ所に入り込んでしまいました。もう7時を回ってしまいました。
とりあえずホテルに連絡を入れなくては。
「添乗員さんの携帯番号を書いた紙 あれどうした?」とふーこさんに言われ
「それも置き忘れた紙袋の中。」と応える私。
ホテルのフロントにかけるしかない、でも電話は?
仕方がない、どこか お店にとびこんで 電話借りよう。
ウインドウ越しに女性がひとりのお店があるので 飛び込んだ。
下を向いていた女性が顔を上げた。血相を変えた日本人のおばちゃんがふたり入ってきて、お互い顔があった瞬間 ほんの間沈黙。
「日本人?」「はい、そうです、日本人。」
地獄に仏とはこのことです。まだ20そこそこの日本人の女の子だった。
革の工房らしい。靴を作っているところだ。
「すみません、助けてくれる?」
事情を一気に話すと、
「それで、私は 何をすればいいですか?忘れてきたものはもういいのですか?」
「そちらはしょうがないので、まずは ホテルの添乗員さんと連絡がとりたいの」
ふーこさんがバックをひっくりかえして ホテルの電話番号を見つけ、
女の子は携帯でホテルに電話をかけてくれた。フロントにつながるが 2回ほど切られてしまう。女の子のイタリア語がなんとなくおぼつかない気がする。
それでも10分ほどたって、やっと ホテルにいる添乗員Sさんと繋がった。
「こちらの場所は サンタ・クローチェです。」と場所の説明をこの女の子にしてもらってから 私が電話を代わった。
「タクシーでね、とにかくホテルに帰ってきてください」
添乗員のYさんがみなさんを先にレストランに案内して、Sさんは私たちを待っていてくれるという。
タクシーを女の子に頼むと、タクシーの呼び方がわからないし、歩いても15分ほどなので 歩いたほうがいいと言われ、とぼとぼと歩いて疲れた足をひきずって帰った。
途中まで道を教えにわざわざ外に出てくれた彼女にお財布に残っていたなけなしの5ユーロを渡した。 ホテルの金庫に現金を置いてきていて 少ししか持って出ていなかった。
後でよく地図を見てみると、彼女の教えてくれた道もちょっと遠回りだったね。きっと彼女まだ日が浅いのではないかな、フィレンツエに住んで。 でも助かりました。
ありがとう。靴の職人さんめざして頑張ってください。
忘れ物は見つからなかったけど、ホテルに帰りつきほっとする。すぐにSさんに連れられて、歩いて数分のレストランへ。みなさん、前菜が終わる頃でした。
私のどじ話を披露しながら みなさんとも慣れてきたし楽しい夕食だった。
忘れ物は 明日Sさんが お店に電話してくれることになっていた。
FAXはしてもらえませんか?と聞いたら この国はFAXを確実に見ないことも多いし、店員さんが違うこともあるから してもねえ とSさんは言う。
メインメニューはフィレンツエ名物のTボーンステーキ。
わらじのように大きなお肉でした。顔の大きさくらいあった。
お味は柔らかくて美味しかったけどね。
ツアーに含まれている食事だったけど、飲み物はそれぞれの会計。カプチーノを飲んだふーこさんが、私にささやいた。
「おさいふが無いの。」
「え? ホテルかな、いったんホテルの部屋に入ってあわただしく出てきたもんね」
私のおさいふにもコインしか入っていない。でもなんとか足りた。
部屋にあればと祈りながら帰る。
でも なかったんですよね。
クレジットカード2枚と現金が80ユーロくらい。さっき革のコート代に現金使って良かったわ。でも日本の運転免許証が入ってるんだなあ、とふーこさん。
「またSさんに面倒かける、いやんなっちゃう」
彼女がぶつぶつ言いながら添乗員さんの部屋に行った後、ベッドの下をのぞいたり必死でさがしたものだ。
ふーこさんが戻ってきて、旅行のメモを出し、「パスポート番号は書いてあるのに、クレジット番号は控えてないわ。書こうと思ったときに何かがあったんだなあ」とひとりごとのようにつぶやいている。
そうそう、主婦って 仕事を中断させられること多いよね。
「あー。でもどこでなくなったんだろ、走って落としたのかなあ」
そうかもしれない。わたしのせいだよね。ホントごめん。
「でもチャックは開いてなかったし、肩からたすきがけにしてるのに おかしいなあ」
添乗員のSさんと東京担当Yさんが部屋に来てくれる。
「まずは クレジットカードをストップしましょう。番号、控えてなくてもだいじょうぶですので。」そう言って、ご自分の資料から VISAとJCBの電話番号を調べてかけてくれた。
盗難届けを警察にするとなると、イタリアの場合はものすごく時間がかかり、ツアーに迷惑をかけるので、できれば 添乗員の現認証で手続きを済ませてほしいということで、それをカード会社には了承してもらった。仕方ないのだろうけど、もし、ものすごくいい人が拾ってくれて 届けようとしてくれても もう絶対に戻らないということだなあと なんかしっくりこない感じもしましたね。
「イタリアでは信じられないくらい巧妙にすられるのです」とSさんが断言する。
「バッグ抱えてたのに、そんな覚えはないなあ。ファースナーもちゃんと閉まってたし。」ふーこさんの声は弱弱しい。
「それが 巧妙ってことなんです。」Sさんの声は尖ってる。
旅行保険をかけてたので AIUにも電話を入れたら 免許証の更新手続きの代金くらいは戻るということで、現金などは対象にはならないんだって。
お財布がヴィトンだったけど、これも保証書がないとだめらしい。
「免許証はたぶん大丈夫でしょうが、何があるかわかりませんので、留守宅のご主人にでも電話しておいてください。日本でスムーズに更新するために何か必要なものがあるかもしれませんので」とSさんは言うのだけど、それって 意味あるのかなあ。
Sさんの発言は 最初から ふーこさんの窮状を助けようという気持ちからではなく、あくまでも添乗員の仕事をそつなくこなそうという意思のほうが強いように感じてしまう。
「やだなあ、あいつに電話するの。」ふーこさんは離婚調停中なのだ。
「かけなくていいんじゃない、どうせ縁切れるんだから。」と言った私もばかだった。
「こんな時に なんだかぐさっとくる。」
そうだよね、添乗員Sさんの口調もきつくて、私も思いやりがなかった。
ふーこさん、ごめん。
Sさんが 今度は私に
「置き忘れられた紙袋ですが、お店が開くのは通常9時半すぎですので、明日、そのころにお店に電話しますので、そばにいてください。でももし 荷物があっても 明日は市内観光にみんなで出かけるのが11時半ですので、取りに行かれてもまた帰ってこられないということになると大変ですので‥」
「でも それまでには充分」と言いかけると、「また、何が起きるかわかりませんしね」
「とにかく電話はしますので」とSさん。もう全く信用されてませんね、私たち。
一連のやり取りの間、東京添乗員のYさんは気の毒そうにしてらしたが ほとんど口をはさむことはなかった。
おふたりがひきあげた後、力をふりしぼって おふろに入ろうとしたら お湯がちょろちょろ出が悪い。S添乗員にはもう頼めない。部屋変えてもらうのも今さら面倒だ。我慢するか。先に入ったふーこさんがドライヤー持って出てきた。
「つかないの。」 冗談みたいだ。
ふーこさんは 絶対にドライヤーがないとダメなのだ。(それならもってこいよ!と心で毒づき)
それでフロントに電話しようとしたがフロント番号がどこにも書いてない!
仕方ないので、フロントまで言いに行く。 使い走りのボーイさんがついてきてくれて なるほど動かないねえというようなことを言って出て行く。全く英語も話せない男のこ。数分して代わりのドライヤーを持ってきてくれた。こんなときはチップ渡すの?
渡さなかった。そんな優しい気持ちのひとかけらも残ってなかった。
その夜 私は 英作文 じゃなくて 伊作文をしました。
力を落として寝ているフーこさんの隣で 何枚も何枚も失敗しながら書き上げました。
「サンタ・マリア・ノッヴェーラ教会の薬局で買ったおみやげを、お宅のお店に忘れてきました。もしかしたら お財布も落ちてなかったでしょうか?
もしありましたら アストリアホテル内にご連絡ください。」
「5ヶ国語 トラベル会話集」持ってきてよかった。
Sさんに頼むより 明朝 フロントに頼めばいいのです。そして朝ごはんすませたら 歩いてお店を探そうと決めると、ようやく眠りにつけたのでした。
もう2時を回っていたでしょうか。(つづく)
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