第2回「カクヨ村の料理人」

(♪~番組テーマ曲~♪)


『この番組は』


『稲妻食品と』


『ガガガガガ製薬』


『ご覧のスポンサーの提供でお送りします』


(♪)


「えー、皆さんこんにちはドイドイです」

「アシスタントの鈴木です――ドイドイ先生、今回はまた不思議な所に来ましたが」

「まぁ、初めてやとそう思うかもしれませんね。今日来たのはカクヨ村でございます」

「どんな所か、簡単に説明していただいてもよろしいでしょうか?」

「アマチュア小説家が多く活動していて玉石混交の作品が散りばめられている……まぁ簡単に言うならそんな所ですわな。単純な規模やったらね、ナロ村に行った方がいいんですけども。カクヨ村ナロ村言ってるうちはナロ村には行けませんのよ」

「なるほど……どうして今回、アマチュア作品ばかりのカクヨ村に来たのでしょうか?」

「今カクヨ村ではナロ村と同様に異世界転生者強制送還RTA祭りが開催されておりますのやけど、祭りや言うだけあって屋台もたくさん出てますねん。そしてその中に、僕の知り合いも出店を出してますのや」

「ドイドイ先生の知り合い……料理人ですね!」

「そう。しかもただの料理人じゃございません。界隈でも珍しい、カクヨ村の作品だけを使う専門の料理人なんですわ」

「へ~、気になりますね! 早速向かいましょう!」


  *  *  *


「あ、見えて来ましたよ鈴木さん」

「あれですね」


「お~ドイドイ先生! よく来てくださいました!」


「先生、この方が?」

「はい。カクヨ村の料理人、堀田ほりだ士門しもんさんでございます」

「どうも堀田です! いや~先生! 今日はいいもん仕入れてますよ!」

「どれどれお品書き確認させてもろて……ふんふん、ジャンルのバランスもええ感じで、さすが名スコッパーや」

「照れますなぁ! ガハハ!」

「随分とキャラの濃いお方ですね……」

「そこもええところですわ。ほいなら堀田さん、今日はよろしくお願いします」


「テラス席も用意されていて、落ち着ける雰囲気ですね~。ドイドイ先生は普段、カクヨ村産の作品を料理することはあるんですか?」

「それなりにしますよ。人に出すものには使いませんのやけど、家で自分のご飯作るときなんかは重宝してます」

「そうなんですね~」

「へい、お待ち!」

「あ、料理が来ました! わ~綺麗な盛り付け! 堀田さん、これは?」

「恋愛掌編の盛り合わせでございます」



『恋愛掌編の盛り合わせ』

〈材料〉(1人前)

・掌編小説(~2000字):5篇

・オリーブオイル:大さじ2

・塩:適量

・すりおろしニンニク:適量

・糸唐辛子:適量

〈調理方法〉

①掌編小説を水で軽く洗ったあと、手で一口大の大きさに千切りボウルに入れる。

②ボウルに調味料を加え和える。

③皿に盛り付け、上に糸唐辛子を乗せて完成。



「ではさっそく……う~ん、美味しいです! 掌編の食感が、また色んなのがあって噛んでて面白いですね!」

「これはまた、文体のバラかし方が絶妙ですわ」

「おっ、さすがドイドイ先生気付きましたか」

「どういうことですか?」

「文体は食感、ジャンルは香り。これがまぁラノベ料理人の鉄則なわけですけれども、そこのバランスが素晴らしいんですわ。今回は恋愛小説で揃えてるみたいやから甘酸っぱさが素材で足りていて、そこに塩とニンニクによるインパクト、そんでオリーブオイルで全体を調和させてる……これ文体の違いいうんは全部違う作者さんの作品使ってるんとちゃいますか?」

「正解!」

「ドイドイ先生、食べただけで分かるんですね」

「そうでっしゃろ? これが"プロ"ですねん」

(スタッフ笑い)

「それじゃ、2品目もよろしいでしょうか?」

「はいよ!」



「お待たせしました! ディストピアSFのどんでん返し焼き!」



『ディストピアSFのどんでん返し焼き』

〈材料〉(1人前)

・『We Will Know』(著:不知火しらぬいぬい):1篇

・タマネギ:1/4個

・ショウガ:少量

・酒:大さじ2

・醤油:大さじ2

・みりん:大さじ1

・ラード:適量

・クレソン:お好み

〈調理方法〉

①『We Will Know』にあらかじめフォークで穴を空けておく。

②タマネギ、ショウガをすりおろしたものを密閉パックに入れ、そこに酒、醤油、みりんを加えて混ぜる。

③②のパックの中に『We Will Know』を入れ、よく揉み込む。

④3時間冷蔵庫内で寝かせ、味を染み込ませる。

⑤フライパンにラードをしき、弱火で漬け汁ごと15分蓋をして蒸し焼きにする。

⑥中盤まで火が通ったら蓋をあけ中火にし、焦げ目を付けるように両面焼く。

⑦皿に盛り付け、クレソンを添えて完成。



「すごい、何もせずとも良い匂いがしてきますね。ではでは……うん、味がしっかり中まで染み込んでいて、噛めば噛むほど味が――!?」

「どないしました鈴木さん?」

「き、来ました! 何ですかこれ、うわ、うわわわ……はぁ……ふぅ」

「感じましたか、どんでん返しを」

「堀田さん……はい、最後それぞれの味が混ざってきたかな、というところでいきなり味が変化してガツンとした香りが……ジャンルが変わりました」

「どれ……ふむふむ、タマネギの甘さが作品によく合っててええですな――おお? あ、来ました来ました、おー(笑)」

「どうでしょう先生?」

「面白いですねぇこれ、ジャンルがガラッと変わりましたなぁ。閑散とした世界のディストピアやぁ思って味わってたら、一気に世界の輪郭が解けて弾けましたなぁ」

「でしょう?」

「そんでそっからの疾走感がすごいから、スッと鼻に抜けてくどく残らない。いやぁこれはええ作品や、私が使いたいくらいですわ」

「ドイドイ先生にそこまで言ってもらえると嬉しい限りですな~! それでね先生、こちらのどんでん返し焼き、他にもホラーとミステリーでも1作品ずつ用意してますねん」

「ん? 全部どんでん返し焼きですか?」

「まぁ、諸事情ありまして」

「諸事情なら、仕方ありまへんな」


  *  *  *


「いや~美味しかったですねぇドイドイ先生!」

「いやぁ堪能しました。たまにはカクヨ村の方に足を伸ばした方、舌も鍛えられるっちゅうこと改めて感じる料理でした」

「また食べに来たいです」

「堀田さん以外にもオススメの料理人はたくさんいますので、行くときは紹介しますので声かけてくださいね」

「ありがとうございます。ではでは今回はここまでで。アシスタント鈴木と――」

「ドイドイ・ヨーシハールがお送りしました」



(♪~番組エンディングテーマ~♪)


『この番組は』


『稲妻食品と』


『ガガガガガ製薬』


『ご覧のスポンサーの提供でお送りしました』


(♪)

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