第24話 捕獲完了

 朝起きてしばらく歩くと、雪原に雪がない不思議な場所があった。シルビアによればそれはコカトリスがいる証拠なのだとか。で、どこにいるのかと探していたら、足元から声が聞こえたわけだが。


「コケッ?」

「え、思ったよりかわええ。なあ、みろよ? 見た感じ毒もないし……なんでそんなに離れてんの?」







「はい、コカトリス一匹20万ギルドが、3匹で60万ギルドです、ご確認ください」

「ありがとうネ」

「それより………大丈夫ですか……?ユウタさんは」


 俺たちはコカトリスを捕まえた後、ギルドの引き返し報告をしていた。


「あぁ、気にしなくていいアル。いつものことネ。ほっとけば勝手に元気になるアル」

「そ、そうですか……それなら大丈夫ですが……」


 リンに腕を引っ張られ2人の待つ酒場へと降りていく。


「いい加減諦めるネ。あんなの飼えるわけがないアル。あれでもランクDの超危険レベルに指定されてる魔物アルヨ。少しでも変な気起こしたらこの街が崩壊するネ」


「せっかくこの世界での癒しを見つけたというのに……街が崩壊ってどういうことだよ?」

「一匹コカトリスが町に入ればその街はもう住めなくなるネ」


 身の危険を感じると半径3メートルの生物が即死するレベルの毒を撒き散らすらしい。しかし、思いの外可愛かった。

 その愛らしさに、俺は心を射抜かれた俺は、危険を承知で飼わせて欲しいと頼んだのだが、やはりダメだと。


 酒場にいた2人と合流する。


「そろそろ、魔王になるために本腰入れないとマズいと思うのよね………」

「ステータスもクソ雑魚なのに魔王になれるわけありませんよ。とりあえずまずは強くなるところからですね」


 2人は角の方の席で何やら真剣な表情で話し合っていた。


「……おいおい、ここで話す内容かよ、なんか他の冒険者達から注目浴びてんじゃないか」


 酒場に来ていた冒険者らが、俺に視線を向けている。これは、バカにしているような感じではない。


「……ちょ、え?お前達何かしたの?なんかいつもとは全然違う熱い視線を感じるんだが」

「コカトリスの話を聞いてたみたいですね」


「お前、コカトリスを手懐けたらしいじゃなねえか? すげえな」


 後ろから男の声が聞こえた。振り返ればそこにいたのは戦士風の男。


「あ、いや、その手懐けたっていうか、まぁ、勝手に懐いちゃった感じで……結局こいつらに売られましたけど……」

「誰も受けねえから単価が上がってたんだよ。それをまさか、ランクFがいるパーティーが達成してみせるとはな!! しかも死人も無しに!! 流石にもうバカにはできねえぜ、ガハハハ」


 俺はその言葉を聞いて、背中に冷たいものが伝わるのを感じた。


 死人も無しにって……普通何人か死ぬってこと……?


「は、はぁ………おい!!! お前、わかってるだろうな?」


 イザベラに視線を移す。あからさまに目線を逸らした。珍しく今回のことがどれだけ危険なことだったかを理解しているらしい。


「ごーめーんーなーーーーす」

「おいふざけんな。そんな言葉はねえ。俺はまだ死にたくねえんだよ!! 一歩間違えば死んでたかも知れねえんだぞ!? わかってる!! ねえ、わかってる!?」

「わかってるわようるっさいわね」

「わかってねええ!!!!!!!!」


 シルビアとリンは気にする様子もないが、戦士風の男がいたたまれなくなったのか、2人の仲裁に入る。


「おいおい、とりあえず無事に帰ってこれて何よりじゃないか……あんまし喧嘩すんなよ」


 ……おそらくこの人もランクDかCか、それ以上だろう。あんまり強くは出れないな。殺されはしないだろうが、怖い。


「わかりました……」

「わかればいいのよわかれば」

「お前は反省しろや」


 そんなこんなで、コカトリス討伐が完了した。

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