第8話 こんなの酷すぎる
「なに俺………あんな奴に殺されにゃ行かんのか………?あんなあからさまにいきなりチートもらってしょっぱなから無双してそうな奴に………?」
「うん………こんなに早く現れちゃうなんて!!!まずいわどうしよう……」
「なにがまずいかわからんが、とりあえずまずいんだな………?いっそのことここで後ろからブスリと行くか………。」
冒険者ギルド内はお祭り騒ぎ、冒険者登録もまだ済んでいないがそれどころではなかった。
俺の目線の先には、肩の辺りまで伸ばしたサラサラの黒髪を耳にかけ、全身に漆黒のいかつい鎧を身に付け、左目にはドクロの眼帯を付けている、今まさに騒がれている渦中の少女、あれは、10とおそらくちょっとの年だろう。いかにも大人しそうで育ちの良さそうなたたずまいだが、どうにも俺は極度な嫌悪感を
つまりは、今は酒場に降りているあの厨二病魔法使い、シルビアと同種………いや、俺の本能はあのシルビアが可愛く見えてくるレベルに厨二病を拗らせると言っている。
俺は、隣でワナワナと焦っているイザベラに声をかけた。イザベラが慌てた様子で俺の問いかけに応える。
「……それはダメよ、契約違反で痛覚最大にされて一生死ねない呪いにかかっちゃうわ………」
冒険者はランクSSからランクGまでの間でステータスに応じてランク分けをされるらしい、ベテラン冒険者の平均がランクCだというのだから、あの
俺の検査結果はまだ出ていないかどうせクラスGかよくてFだ……まともにやりあって勝てるわけがない。
つか誰だよ………この世界には見かけによらず………がないって言ったの。あれはどう見ても魔法使うような格好してねえよ。ごりっごりの前衛だよ。あんな華奢な小さいガキが大の大人より強いとかシンプルに気持ち悪いん…だ…が………ん?
今イザベラがさらっとえげつないこと言わなかったか?
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「自己紹介が遅れたが、俺がユウタで、こっちの露出狂がイザベラだ」
「ふっ、実力の差を思い知らしめちゃったようね」
「ステータスどんなでした?ねえ、ユウタ、ステータスどんなでした?私をコケにしたからにはそれなりのステータスなんですよね?Dかな〜Cかな〜それともBだったり!?」
勇者登場のせいでギルド内が騒ぎになった後、酒場で祝杯が始まり、ギルド内の職員もそれに参加したため今日のクエストは中止、ということで、部屋に戻ってきた。
自己紹介をしてみたがそんな言葉はどこ吹く風、こいつらはステータスのことで頭がいっぱいのようだ。
俺は床に座り腕組みして考え込んでいるが、その様子をニヤニヤとイザベラ………とシルビアが見ている。
「や、待て、なんでお前までいるんだシルビア、元々単発契約だったろ。昨日は流石にこんなメスガキを夜遅くに外に出すのは危ないと思い俺の善意!!で飯も泊まる場所も風呂も入れてやったが、zeniッッ!!でな。そんなお前がなんで当たり前のようにここに入り浸ってるんだ」
「いいじゃないの、あんた同族だからってそんなんでいちいち人の好き嫌いしてたらこの世界じゃ生きていけないわよ?」
俺はそんなイザベラの言葉に不満を覚えながらも、一旦置いといてこそっと話しかける。
「お前は本当にそれでいいのか………?仮にも俺は魔王を目指していて、人間とは対立関係にあるべき存在なんだろ……?俺もテンプレしか知らねえからわかんねえんだけど、ともかく、人間仲間にしていいのか?普通に考えりゃこいつも仲間だと思われて殺されちまうぞ………?」
「ねぇステータス………」
「大丈夫よ、なんかそう、あれね、仲間にして四天王とかつくっちゃえばいいじゃない?よくいるでしょ?魔王の前にいるそれぞれ独特な力を持った変な4人が、いや人とは限らないけど」
ダメだ………話になんねえ。四天王は聞いたことがあるが四天王より弱い魔王なんて聞いたことねえ。
「なんでそんなにシリビアが気に食わないのよ?強力な魔法も使えるし、この世界の住人だからこの世界には割と詳しいし、現に昨日だっていろんなこと教えてもらったじゃない?同族嫌悪もハナハだしいわよ」
「ねぇねぇステータス………」
「お前………昨日見てただろ………?チンポもがれかけたんだぞ………?」
「そんなことでいちいち切れてんじゃないわよ。ちんこの一つや二つなくなったところで死ぬわけでもないでしょ。むしろ軽くなって動きが早くなるんじゃないの?あ、そこまでの重量なかったわね、ププ………あああああああ!!!わかったから!!!ごめんてばあああ!!!」
イザベラは窓から外にダイブしようとした俺を全力で引き止める。
「お前……まじで本当は俺に死んでほしいいんだろ………?」
「そんなわけないじゃない!ついよつい!つい口が滑っちゃうの」
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「別にパーティーに入るくらいいいじゃないですか」
「よくない」
俺のステータスは案の定クラスGだった。そしてイザベラは、ランクD。うん、おかしい。しかし、正直なところ、イザベラが素手で魔物を捕まえたあたりからそんな気はしていた。あれ………?実はこいつ強いんじゃね………?と、
「ちなみに、私はランクCの魔法使いです!」
「なんだお前、自慢してんの?つかランクCならどこでもパーティー入れるだろ、うちにこだわる必要なくね?なんでそんなにここにこだわんの?」
いや、俺は正直聞かずとも知っていた。世間的には評判のいい仕事をしているのにいい歳して結婚していない、さらには恋人もいない人間にはなにかしらの問題があることを。こいつも同じだ。この年でベテランの域に達している魔法使い、本来であればどこからも引っ張りだこなはず、しかしこいつの話を聞くところによると、そうでもないっぽい、むしろ昨日、俺たちにとっては大金だが、ランクCともなれば
そんな奴を俺の仲間にはしたくない………!!
シルビアが深刻そうな顔で話し始めた。俺の本能が告げている。これは絶対にめんどくさいことに巻き込まれるフラグだと、
「私………」
「うん、やっぱ言わなくていい。ここにいていいからもうその先は黙ってて」
「………ほ……ほんどでずが……?う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ユウタあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
シルビアが顔をぐっちゃぐちゃにしながら俺に抱きついてきた。
「う、う、うわ!!おお、おい!!やめろ!!離れろ!!!またジャージが汚れるだろがあああ!!!わかったわかったわかった……!!感情表現はそのくらいにしてまじで一旦離れろ!!うわっ!!なんか湿ってきた………おおおおわああああ!!!離れろおおおお!!!!!」
一通り泣いた後、ところでステータスは?と言い出したので無言で一発叩いて俺たちは風呂へと向かった。
そんなこんなで、ランクCの厨二病魔法使い『シルビア』が正式に仲間になりました。
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