はす白く咲いてさびしきゆふべかな

【読み】

はすしろくさいてさびしきゆふべかな


【季語】

はす(蓮)〈夏〉


【大意】

ハスの花が白く咲いてさびしいゆうべであるよ。


【付記】

寂蓮(?-1202)のうたの本歌取りとして良いかと思う。


この句を喩えて言えば、ふかく想っていた人とはれて恋愛が成就したものの、それが現実になると当初の浮かれた気持ちがさめてしまうようなものだろうか。


日本にサクラ、半島にムクゲ、唐土(=中国)にモモがあるように、天竺(=インド)にはハスがある。仏教にゆかりがあるため句も少なからずあるが、ことわざにもなっている蕪村(1644-1694)の「この泥」の句をさしあたり白眉として良かろうか。


【例歌】

さびしさはその色としもなかりけりまき立つ山の秋の夕暮 寂蓮じゃくれん


日下江くさかえの 入江のはちす花蓮身のさかびとともしきろかも 引田部ひけたべの赤猪子あかいこ

みはかしをつるぎの池の花蓮さきのさかりは今日にしあるらし 本居宣長


【例句】

晦日つごもりの暮にもしろき蓮かな 由平よしひら

鯉鮒のこの世の池や蓮の花 許六きょりく

蓮の花ちるや八嶋のみだれ口 史邦ふみくに

蓮の香や水をはなるる茎二寸 蕪村

戸を明けてくりやに蓮の主かな 同

この泥があればこそ咲け蓮の花 同


百花咲てかなしびおこるゆふべ哉 几董きとう

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