あをあをとふぢに落つるやとびの影

【読み】

あをあをとふぢにおつるやとびのかげ


【季語】

ふぢ(藤)〈春〉


【大意】

青々とフジの花にトビの影が落ちることである。


【付記】

「とび(鳶)」は無季である。しかし、わたしはそれに春のイメージを持っているようである。改めて調べてみると、日本のトビは留鳥(=渡りをしない鳥)とされるようである。上昇気流に恵まれないであろう冬場は苦労しそうなものだが。


標題の句は色彩の対比に重点をおいている。すなわちフジの薄紫、それが翳って生まれる濃紫、トビの茶およびそれが飛ぶ空の青といった具合である。ところで、フジの色やトビの色も広義の(色を赤、白、黒、青の4つに還元した場合の)青にふくめて良いとわたしは思う。


ときに、「落つる」なる文語をつかってみて、「落つ」は「うつる」の親戚なのだろうと思った。


【例句】

蛙なく田のいなづまや鳶の影 野坡やば

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