さけの名をこころに月をみる夜かな

【読み】

 さけのなをこころにつきをみるよかな


【季語】

 月見〈秋〉


【大意】

 酒のなまえを心にきざむようにして月をみる夜である。


【附記】

 名付けほどセンスが試されるものも滅多にないと思う。


【例句】

 おもかげをばひとり泣く月の友 芭蕉

 月見せよ玉江の蘆を刈らぬ先 同

 よねくるる友を今宵の月の客 同

 月見るや庭四五間の空のぬし 杉風さんぷう

 岩鼻いははなやここにもひとり月の客 去来きょらい

 蔵やけてさはるものなき月見哉 正秀まさひで

 おひの菓子古郷寒き月見哉 其角きかく

 の秋は膝に子のない月見かな 鬼貫おにつら

 優婆塞うばそくが鉢の恩しる月見かな 野坡やば

 塩豆で奈良の与助が月見哉 木導もくどう

 侍の身を露にして月見かな 史邦ふみくに

 目利めききしてわるひ宿とる月見かな 如行じょこう

 芋売は銭にしてから月見かな 也有やゆう

 うかれ来て蚊屋外しけり月の友 太祇たいぎ

 さして行く牛島黒し月見船 不白ふはく

 御月見や儒者に禅師に能太夫 嘯山しょうざん

 湖を月見の旅や友二人 召波しょうは

 夜刈する田子に酒遣る月見哉 五明ごめい

 お月見をていしゆに十五丸めさせ 作者不詳

 にほひとつ相手に池の月見かな 蒼虬そうきゅう

 もろもろの愚者も月見る十夜哉 一茶

 年よりや月を見るにもナムアミダ 同

 吉原は鬼灯ほほづき売れぬ月見かな 琴風きんぷう

 大名も橋の月見はかちよりぞ 同

 月に行く漱石妻を忘れたり 夏目漱石


 野ざらしを心に風のしむ身哉 芭蕉

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