信心の難波はぬくし冬ながら

【読み】

 しんじんのなにははぬくしふゆながら


【季語】

 冬ぬくし(冬温し)〈冬〉


【大意】

 人々の信心のあつい難波は冬なお暖かいのである。


【附記】

 ひと昔前(半世紀ほど前か)まで大阪は東京等とくらべて日常に信仰根付いた土地であったかと想像している。いまはどうか知らないが、大阪の冬は日本一暖かいと小耳にはさんだことがある。


【例歌】

 難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこの花 王仁わに

 直越ただこえのこの道にして押し照るや難波の海と名付けけらしも 神社老麻呂かみこそのおゆまろ

 難波津を漕ぎ出て見れば神さぶる生駒高嶺いこまたかねに雲ぞたなびく 防人歌さきもりうた

 心あらむ人に見せばや津の国の難波わたりの春のけしきを 能因のういん

 難波潟入江をめぐる蘆鴨あしがもの玉藻の舟にうき寝すらしも 藤原顕輔ふじわらのあきすけ

 いつしかと春来にけりと津の国の難波の浦を霞こめたり 西行

 津の国の難波の春は夢なれや蘆の枯葉に風渡るなり 同

 難波がた潮干しほひにたてる蘆たづの羽しろたへに雪ぞ降りつつ 源実朝

 露と落ち露と消えにし我が身かななにはの事も夢のまた夢 豊臣秀吉


【例句】

 浪速津なにはづにさくやの雨やはなの春 宗因そういん

 あすはちまき難波の枯葉夢なれや 芭蕉

 難波津や田螺たにしの蓋も冬ごもり 同

 落着おちつきは難波のゆめや都鳥 句空くくう

 枯蘆や難波入江のささら波 鬼貫おにつら

 若菜うる声や難波の浅みどり 支考しこう

 月花の種や難波津浅香山 宋屋そうおく

 顔みせの難波のよるは夢なれや 太祇たいぎ

 難波女なにはめや京を寒がる御忌詣ぎよきまうで 蕪村

 やぶ入や浪花なにはいで長柄川ながらがは 同

 難波津や橋めぐりして夜の雪 青蘿せいら

 難波女のかごに見て行くしぐれかな 几董きとう

 梅散るや難波の夜の道具市 巣兆そうちょう

 戸口から蘆の浪花や冬の月 蒼虬そうきゅう

 早稲酒わせざけや難波長者の笑ひ声 井月せいげつ

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