窓なくて窓際族やかんこ鳥

【読み】

 まどなくてまどぎはぞくやかんこ鳥


【季語】

 かんこ鳥(閑古鳥)〈夏〉


【語釈】

 窓際族――出世ラインからはずれて閑職につく中高年サラリーマンを揶揄することば。[参考:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典]

 かんこ鳥――カッコウの異称。


【大意】

 窓のない場所で窓際族をしている身に閑古鳥が鳴くのであった。


【附記】

 きょう日「窓際族」なる語を聞くこともないが、仕事をしない中高年男性の話は以然として聞こえてくる。わたし自身は窓際族ではないつもりだが勝手に疎外感を覚えており、「中隠」を自称した白居易(=白楽天。772-846)に倣いたいと思う。


【例句】

 うき我をさびしがらせよかんこどり 芭蕉

 須磨の浦かんこ鳥鳴く夕かな 凉菟りょうと

 侘びしらに貝ふく僧よかんこ鳥 其角きかく

 かんこ鳥なく青砥あをとが台所 支考しこう

 えのきから榎へとぶやかんこ鳥 蕪村

 親もなく子もなき声やかんこ鳥 同

 かんことり木の股よりや生れけん 同

 さびしさの中に声ありかんこ鳥 召波しょうは

 ほろほろと夏の落ち葉やかんこ鳥 暁台きょうたい

 閑古鳥青葉まじりの花の中 士朗しろう

 閑古鳥なくや終日ひねもす遅ざくら 道彦みちひこ

 この里も年寄り多しかん子どり 蒼虬そうきゅう

 かんこ鳥しなのの桜咲きにけり 一茶

 灯ともせばあちら向けり閑古鳥 梅室ばいしつ

 幽禽と詩にこそ作れ閑古鳥 尾崎紅葉

 物言はぬ僧に逢ひけり閑古鳥 泉鏡花

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