第3話 どんぶらこっこ。

 「はっ!」

 目を覚ましたら見覚えの無い場所に居た。古い街並み、いつの時代だ?

詳しくはわからないが物の少ない時代なのは確かだと思う。思うだけ。


「このカッコはなんだ?」

宇宙人の奴勝手に変化したな体内で。これは何..鳥か、何の鳥だ。

「っと待てよ..微妙な変化、って事は微妙な鳥か。」

微妙な鳥、古い街並み..そうか。


「成る程な、そういう事か。」

種類は分かった、次はどうするかだ。

〝他の二匹〟と違って飛行能力があるからな、遭遇するとしたら偶然を装う必要がある。普通に考えて偶々出会う種類じゃない鳥だからな。


「羽よ動け!」

都合が良いな、練習しなくても羽ばたける。こういうところは凝ってる。

「さて何処だ..?」

目印は変な巾着袋と派手な服だ。

完全なイメージだけどそんなもんだろ

「ん?」

あの街の建物脇の道、明らかに変な服を着た派手なポニーテールがいるぞ。

「低空から少し話を聞いてみるか」

あの鳥だと判断されない位置を探って適当な位置に...くそ、まさか屋根の上に乗る日が来るとは。


「腰につけた団子くれよ、そしたら鬼倒すの手伝ってやるからよ!」


「貴様如き畜生に剛の化身である鬼が討てるとでもいうのか、滑稽だな..」


「ダイジョブダイジョブ、一撃よあんな連中。左肉球でポンよ!」


やっぱりそうか。

犬は鬼の事をナメ過ぎてるな、それにあの男、思ってたよりイカツいな。

犬のこと畜生とか言ってたぞ、二の腕ビビるくらい張ってるし。


「ふん、ならば見せてみろ。

良心から携えられし供物、お主に分けてやる。必ずや我が力となれ」


「御意!」

従ったよ、流石犬だな。

立て膝付いてる、見たくない犬の立て膝。もうアゴとか撫でれないよ犬の。

「次は流れでいくと猿か。」

とんでもない大猿とか出てくるんじゃないだろうな、やめろよそういうの。


「おうの旅人!

オレをお供にしねぇか?」

「帰れ。」

冷た!

前通り過ぎた平気で猿の、ていうか同じ通りにいるんだなお供って。


「へっ、サルが〝去る〟ってか..」

うわくだらなっ、猿くだらな。

「………ふっ..」

あれ、男の足が止まった?

流石にキレるか、腹立つもんなあれ。

「ふ、ふふふふふっ..!」..え?


「ふははははっ!

あっはっはっはっはっ!!」

え、笑ってる?桃の字腹抱えてない?


「面白い猿公、共に来い。

我が供物を分けて力となるがいい。」


「へ、わかってんじゃねぇか」

浅いな桃の字、くだらなくて浅い。

凄い真面目に育てられたんだな多分な


「おっと次オレの番か。

なんか不安になって来たな、前の連中を見てると敷居が思ったより高い」

まぁでもキジなんてそうそういないだろうからな、適当に降り立って頼み込めば割と簡単に...。


「..ちょっと待ておい。」


「荒ぶる鳳翼共よ!

我の元に降りたくば君臨してみせよ」

めちゃめちゃいるんですけど。

無数のキジが渦を巻いて突き合ってる

なにこれヒッチコック?

「こん中入るのオレ、嫌だよバイオレンスパニックで映像デビューは。」

くちばし痛そうだなぁ..。

マジの鳥は加減しないだろうしなぁ突つくとき、怖いわぁ。


「なぁ、あの数ヤバくね?」

「だよな。引くよな、あの量は」

お、猿と犬が揺らいでる

犬猿が仲良くしてる、異常事態だな。

「なぁモモタ。

あれホントにつれてくのか?」

「あんなヒッチコックみたいな光景に首突っ込むの辞めようぜ」

ヒッチコック知らないだろお前、てかよく見りゃトイプードルじゃねぇか!


「あいつも別の次元から..?」

とにかく判断基準は桃太郎だ、正直オレ自身もあの渦には参加したくない。こうして屋根で静かにしていたい、まさか屋根をここまで好むとは。

「こっちだ桃太郎、オレに気付け!」


「..うわぁ、何アレ...?」

お前は引くなよ。

お供選ぶんだろ、「君臨してみろ」とか言ってたじゃん偉そうに。


「一旦帰るわ、また別の日に呼ぶ。」

「きびだんごは?」

「また持ってくる、婆と爺それだけの役目だから。」

ご両親をなんだと思ってんだてめぇ!

保留とか出来んの鬼退治って。


「桃太郎帰ってくよ、どうすんのこのキジ達。てかオレどうすんの?」


 桃太郎宅

「……ふぅ。」「……はぁ。」

桃太郎パラメータ設定

犬、猿、キジ...。

「じいさん、これやっぱ失敗じゃろ」

「だなばあさん、また作り直そう。」

機械の使い方がまるで分からない老夫婦、桃を開いて中に入った機械を触り基準設定を弄り倒した。


「太郎と一緒に入っておった。

〝宇宙からの贈り物です〟じゃと。」


「私たちにはわかりませんねぇ..。

この赤い灯は何ですか?」

赤いランプは警告音、時系列に侵入者が入った事を示す合図。


「ここのでっぱりなんじゃろうか。

〝リセット〟?」


「押してみて下さいな。」

「....ほい。」

老夫婦は気を失い、桃は再び川上へ。


ーーーーーーーー

「……はっ!」

目を覚ました露吹錠は布団の上にいた

人間の姿を保ちながら。

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