第4話:報復・スルト視点
「ラメリア王妃殿下、どうかウラント公爵家をお救いください。
もし兵を差し向けてくださるのなら、ウラント公爵家は全てをなげうって、ミズン王国のために尽くします。
ミズン王国軍を迎え入れ、ロワード王家の貴族士族を調略いたします」
「ほっほっほっほっ、それは頼もしい事です。
ですが、今のウラント公爵家にそれほどの力がありますか?
キレル卿も愚かな事、貴男の事など見捨てて、我らと手を組んでいれば、今頃大公か属国王に成れたものを、おっほっほっほっほっ!」
屈辱で顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。
ラメリア王妃は俺の事を嬲って楽しんでいるのだ。
私の悔しがる姿を、ブドウ王との性交のアクセントにして楽しむつもりだ。
その程度の事は、色事を極めた私はお見通しだ。
それでも、分かっていても、この屈辱感はどうしようもない。
ノヴァの鉄拳を喰らって歪み陥没した鼻のように、取り返しのつかない事だ。
「確かにウラント公爵家は多くの領地と軍資金を失いましたが、まだ大魔境を持っています、大魔境に隠してある魔物軍を使えば、王家王国に一泡吹かせられます。
どうかロワード王国の乗っ取りに手をお貸しください」
「おっほっほっほっほっ、先ほどとは言っている事が違いますね。
先程は先兵となると言っていたのに、今は王国簒奪に手を貸せと言う。
今言った王国簒奪がお前の本音でしょう。
私の力を利用しようと思ったのでしょうが、そうはいきません。
私を甘く見た報い、受けてもらいましょうか」
「え、いや、それは、違うのです、言葉を間違えただけで……」
ラメリア王妃の目が、まるで血の色のように真っ赤になっている。
その眼に見つめられるだけで、全身の力は抜けていく。
このままではいけない、逃げるべきだと分かっているのに、身体が全く動かない。
このままここにいたら、自分が自分でなくなってしまうのが分かる。
この国に送られてから聞いた噂、ラメリア王妃は悪魔に魂を売っているという。
悪魔に力を得ているからこそ、ブドウ王を籠絡することができたという。
もしその噂が本当なら、私もラメリア王妃の操り人形にされてしまう。
そんな事に成ったら、私のためにウラント公爵家を傾けてくださった、愛情豊かな父上に申し訳ない。
それに、私には譲れない絶対の願いがある。
私を陥れた元妻のノヴァに復讐する事、これだけは絶対に成し遂げたい。
私の愛を受け入れないばかりか、顔に青あざをつけて大恥をかかせた女。
その所為で使用人にも馬鹿にされ、父上にも叱責された。
私が気に喰わなければ愛人を作ればいいものを、誰にも相手にされず、私の寝室を覗いては嫉妬の炎を燃え上がらせていた卑しい女。
夫が不能で困っている貴婦人を助けていただけなのに、自分の性的不満を貴族のマナー違反だとすり替え騒ぎ立て、ウラント公爵家を追い込んだ極悪人。
ノヴァに復讐するまでは、絶対に死ぬわけにはいかないのだ!
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