祭りや夢の国では雰囲気料が発生しがち

 



「おまえ、食べたことないもの多いよな」


 境遇的に当然といえば当然ではあるが。最近料理を始めだしたのもそこらへんが関係しているのかもしれない。


「まあそうだね。映像として見たことあるものは割とあるんだけどね。よく風物詩みたいな食べ物ってあるでしょ。ああいうのって食べてみたいなって思うよね。ほら、祭りでよく出てくる綿菓子とか、とうもろこしとかあるじゃん。涎が垂れるよねえ」


 幸福はじゅるりと口の端から垂れるよだれをすすった。


「あんまり期待しすぎてがっかりするなよ。綿菓子とかただの砂糖の塊だし」


 あんなもんが500円とかで売られてるんだぞ。個人的には、祭りは子供をカモにしたぼったくりみたいなもんだと思っている。そういうの雰囲気料とか言うらしいけど。まあ、場所代とかいろいろあるのかもしれないけどさあ……。


 僕は昔、祭りで出ていたくじ引きの景品であるエアガン欲しさに、財布の中身を空にしたのを思い出してかなしい気分になった。


「あーあ、そういこと言われると萎えるんだよね。はい憧れが消え失せましたー。これから綿菓子を見るたびに雲みたいにふわふわだぁじゃなくて、砂糖の塊か。カロリー高そうだなぁ体に悪そうだなぁ……ってよぎるんだ。あーあ」


 幸福がぶーぶーと文句を垂れる。


「さも被害者ぶって人の罪悪感を煽るな」


 そう言うと、幸福は僕に向かってべーっと舌を出した。


「でも祭りじゃなくても、この季節、この日はこうだって食べ物を食べるのは正直ちょっと憧れるかな」

「じゃあ今度の年越しはそばだな」

「えー、どうせ麺類ならラーメンにしようよ」 


 ……さっきと言っていることが違う。僕の気遣いを返せ。


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