だって○○君も持ってるんだもん!僕もこれほしい!
「なんか頼んだの?」
玄関から大きな段ボール箱をえいさえいさと運ぶ僕を見て、幸福がそんなことを聞いてきた。
「バイドも始めたからな。僕もゲームpcとやらを買ったんだ」
「給料って一ヶ月単位じゃないの?もうクビになったの?」
日雇いとか色々あるだろうにどうして最悪な想定をするのか。
「別に金が入ったわけじゃない。金が無くなってからバイトしたんじゃ無計画のバカだろ。金がなくなる状況にならないようにしたいからバイトをはじめたんだよ」
「ちゃんと私のやつの方が性能いい?」
「値段的にはお前の方が格段に上だよ」
あんなもんぽいぽい買えるか。実は今でもpcを見るたびに値段が頭をよぎるんだぞ。
「ならなんでもいいや。でも、そういうのに興味あったんだね」
「好きなやつが好きなものに興味が出るのは普通のことだろ?」
「君、私のこと好きなの?」
「気に食わなかったらクーリングオフで追い出してる」
「へぇ、そうなんだ。ちなみにクーリングオフは8日までとなっておりますのでもう返品はできませーん」
僕は平然を装っただけだけども、幸福はホントに平然そうだった。
「誰かがやってるからやるっていうのは、そのゲームが好きな人からしたらあんまりよくない動機かもしれないけどさ」
「そんなことないよ。 欲しい理由としては、だってみんなもってるんだもんの100倍は良い回答だと思うね」
幸福が珍しいことに、僕に優しい言葉をかけてきた。もう一度言うが、これは大変めずらしいことである。
「同じような風に聞こえるけどなあ」
「周囲がとか、そういうなんとなくでふわっとしたわたあめみたいな理由よりよっぽどちゃんとした理由だよ。君はみんながやってるからじゃなくて、私が好きなゲームだからやろうと思ったんでしょ? ほら、具体的だ」
「そんなもんか」
普段褒められないだけに、なんだか妙に照れ臭くてかなわない。
結局、僕の好きという言葉に対する具体的な回答を彼女はしなかった。
もし彼女が答えたとして、そこには断ったら家においてもらえないかもしれないとか、警察に通報されるかもしれないといった強制力のようなものが少なからず働くと思う。
だから僕の方から聴くことはなかった。それは脅しているようで、なんだか嫌だったから。
……それにどうやら僕は幸福のことが好きらしいけど、その好きがどういう好きなのかよくわからないのだ。でもなんとなく、この好きはキスがしたいだとか、セックスがしたいだとか、そういう好きではないような気がする。だからこれでいいのだろう。
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