こうして僕はドブくさくてガリガリな女をお持ち帰りすることにした
「だからさ、家に住まわせる代わりに僕の話し相手になってくれよ」
「……それを本気で言ってるとしたら、君は相当寂しい人生を送ってきたんだね」
僕が希望を告げたところ、僕の100倍は壮絶な人生を送ってるだろう彼女に生暖かい目を向けられた。どうも納得がいかない。
「大学通いだしてから一人暮らしになったんだけど、大学に行ってる時はほぼ無言で言葉を発さないのが常なんだよ。親と会話することも完全に無くなって、そしたら急に孤独を感じ出して辛い今日この頃なんだよな」
「私の場合、誘拐されてからはゲームとテレビが友達だったかな。なぜかゲームは定期的に追加されてたんだよね。テレビの回線も通ってたし。大人しくさせる為だったのかな?」
と聞かれてもなんと答えればよいのか。そんなナチュラルに誘拐話をされても共感できる要素がゼロだから困る。何気ない会話が超重いんだよ。
「知らん。そして興味もない。なんか色々話されたら同情しちゃいそうだからそういう話は聞かない。会話に身の上は関係ないからな。口が動けば良い」
人恋しさを埋めて欲しいのに心を沈まされても困る。
「施しを伴う同情なら望むところだけど」
「残念ながら僕は口だけで行動はしないタイプの人間だから」
「うわー、クズじゃん」
はいどうもクズですが何か。
「とりあえず臭すぎて目と鼻がきついからとっとと家でシャワー浴びて欲しいんだけど」
正直吐きそうになるくらい辛かった。
「わかった。じゃあ、ん。」
彼女は僕に向けて両手を伸ばしてきた。
「今度はなんのおねだりなんでしょうか」
「空腹と運動不足で体が思うように動かないから運んで」
それは抱っことかおんぶをしなければいけないわけで、密着するわけだ。ガリガリで感触も楽しめない、ただただ臭くて汚いだけの汚物を体に密着させろというわけか。
「たとえ事実でも、その汚物を見るような目はちょっとイラっとする」
「ああ、ごめん顔に出てたか。まぁ見るからにげっそりしてるし、仕方ない。ほい」
「汚物が失礼しまーす」
僕は彼女の前に背を向けてしゃがみこんだ。そして、彼女が僕の背に体重を預ける。
「よっと」
立ち上がると、想像を超える負荷の軽さに驚いた。身長の割に体重が恐ろしいほどに軽い。そのせいでどこもかしこも触っても女の子らしさが感じられない。皮下脂肪仕事しろよ。僕的にはふくよかなムチムチボディがお好みなので、目の保養的な意味で是非ともブクブクと太ってもらいたいものだ。
「やっぱ臭い?」
「うん」
正直に答えた。
「じゃあ私が鼻つまんどこうか?」
彼女もさすがに思うところがあるのか、そんな提案をしてきた。
「じゃあ頼む」
後ろから手が伸びてきて、彼女の親指と人差し指が僕の鼻をつまんだ。
そもそも手が臭いのであまり効果はない。
「ありがとう」
口から出たお世辞は鼻声になった。
こうして僕はドブ臭い女の子をゲットしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます