第15話 昔の写真



冴子さえこさん、ハロウィンに何かコスプレしたことありますか?」


「そもそもハロウィンらしいことをした覚えがないけど。コスプレもしたことないし。それらしいことと言えば高校生の時に文化祭で魔女の格好したくらいかな」


「魔女の格好ですか?」 


「そう。クラスで劇をやることになって眠れる森の美女の魔女やらされたのよ」


 マレフィセントに扮した冴子さん。当時は高校生でまだ子供だったとは言え、冴子さんやれば迫力があって美しいマレフィセントになったことは想像に難くない。


「その時の冴子さん見てみたいです。写真残ってたりしませんよね?」


「あると思うけど。実家にね。手元にはないよ」

 今すぐには見れないのかと私は肩を落としたが、すぐにいい方法を思いついた。

 

 


 それから二週間後。


 私の手元にはマレフィセントな冴子さんの写真があった。


 ハロウィンをモチーフにした写真立てに入れてリビングに飾ったら、冴子さんに怒られた。


「もう、奈津なつ! こんな写真どこで手に入れたの!? ⋯⋯姉さんね。姉さんに頼んだのね!?」


「バレました? そうです。薫子かおるこさんにメールしたら送ってくれました」


 薫子さんとは冴子さんのお姉さんのことだ。先日、家に遊びに来て私も会ってたくさんお話をした。その時にメアドと電話番号を交換して、たまにメールをするくらいには親しくなった。


「薫子さんにマレフィセントの冴子さん見たことないですか? って聞いたら家のパソコンに写真があるからとわざわざ探して送ってくださいました!」


 実にノリがいいお姉さんで、電話で話した際にも面白がって送ってくれた。


「はぁ⋯。もう奈津も姉さんも私で遊ばないで」


「遊んでませんよ。大好きな彼女の知らない姿を知りたかっただけです。それに私、冴子さんのマレフィセントにならさらわれても閉じ込められても呪われてもいいと思ってますよ」


「そう。じゃあ、今年のハロウィンは休みと被るし魔女にでもなろうかな」


「本当ですか? 見てみたいです。魔女の冴子さん!」


「お望み通り閉じ込めてあげるから楽しみにしておいてね」


「私、閉じ込められちゃうんですか?」


「あそこにね」


 冴子さんの視線は寝室を指している。


 目が笑っていないことに気づく。


「お、お手柔らかに⋯⋯お願い⋯⋯します」

 

「それはどうかな。奈津が泣いても出してあげないよ」


 耳元で囁かれ、耳たぶにキスをされる。


「⋯⋯⋯⋯⋯」


「私は悪い魔女だから」


 と冴子さんはほくそ笑む。


 今からハロウィンが楽しみなような怖いような。

 昔の写真の代償が高くつきそうだった。             

         

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