30.


「解消しましたわ。私、初めてお父様にわがまま言いましたの。両思いでないと意味が無いと。」



「そうだな。俺もまだ好きという感情が分からない。友人としてならもちろん相澤のことは好きだ。」



破棄にならなくて良かった。乙女ゲームみたいに婚約破棄したら花京院を許せなかったよ。お互いが納得して解消したなら、私たちが口を出すことじゃない。



「あ、今日習い事がありますの。」



「んー、じゃあ解散かな。俺は残るけど。」



「私も残るよ!」



しゅんはひなたくんに、あかりはれいなに引き摺られて帰っていった。翼くんは私のベッドに寄りかかり眠っていた。病み上がりなのに無理したから悪化したのだろうか。花京院くんが翼くんを背負って帰った。あんちゃんが見たら、喜ぶだろうなあ。明日は退院するんだし、今のうちに寝れるだけ寝ておこう。私は静かにまぶたを閉じた。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「かな。」



「ん? お母さん……? 何時?」



「もう7時よ。友達が来てるみたいだから起きて。」



友達? 少し前にみんな帰ったはずだけど。



「東堂?」



「もう元気そうやなあ。」



「うん。急にどうしたの?」



「俺さ、高橋サンのこと助けようと思えば助けられとった。しかもあんなとこ聞かれるとか思ってなかった。俺、陰口いう女が1番嫌いやのに。」



「別に怒ってないよ。でも、あかりには言わないでね。それにあんなとこに閉じこめる人いるとか思わないでしょ?」



でも……という東堂は思っていたよりも反省していたようだ。



「私のことどう思ってるの? あかりもふくめてね。」



「2人が、って事じゃなくて俺、女子が無理やねん。」



は……? 女の子とよく遊んでるよね? 昨日だって女の子と話してたじゃない。それに年上ともよく遊ぶって言ってたし。私には理解できなかった。



「俺モテるやん?」



はぁ、まぁモテるんでしょうね。綺麗な顔してるし。女子は東堂みたいなプレイボーイが好きなんだろうか。私はやっぱり一途な人がいいと思うけど。



「昔なめっちゃ可愛い女友達おってな。今やから言えるけど俺、その子のこと好きやったと思う。でも……殺されてん。」



えっ、殺されたって東堂の友達がもうこの世にいないってこと?



「殺されたって言うてもナイフでグサッじゃないで? 事故やねん。俺の事好きな子が依頼したらしい。まぁ、正直言うとほんまに死んだかわからん。怖くて会いに行けんかった。」



そんなこともが……。確かにそれは女性不信になるかもしれない。だから、女の子と遊ぶというのもおかしな話しだけど。東堂はほんとうにその子が好きなんだと思う。すごく優しい顔をしてたから。



「でも、会いに行くべきだったと思うよ、私は。その子も東堂に会いたかったと思うしね。」



「……その子もかなって言うねん。高橋サンと同じ名前。やから、高橋サンかと思ったねんけどな、見た目も似とる気がするし。」



東堂と、遊んだ記憶なんて無いけどなあ……。私昔は結構やんちゃな子で友達も多かった。でも、いつからか友達が少なくなったんだよね。別に虐められたとかではないけど。もし、東堂と遊んだことがあったとしても事故にあった記憶はないなあ。



「いっ!」



昔を思い出そうとするとこめかみが傷んだ。



「大丈夫!? ごめん、変なこと言うてもうた。」



全然大丈夫、と伝えるとすごく心配そうな目で見られた。すると、突然お母さんが病室に入ってた。そのまま東堂を連れていった。え、誘拐? お母さん何してるの……。小さく手を振ってお別れしたので楽な体勢に戻った。そしてもう一度瞼を閉じた。あー、すぐ起こされるだろうなあ。晩御飯まだだし。もしかして、私のこと忘れられてるの?

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