7.

私はあかりに別れも告げずに家の中に急いで入った。今日はカレーなのか、カレーの匂いがプンプンする。なんであの人が……


「かな。」


 ビクリと体が動く。ゆっくりと振り返るとその人は傷ついた顔をしてにっこりと笑った。


「れ、ん」


「久しぶりだね」


「うん」


 れんは私の兄、と思っていた人だ。私の両親の友達の子供だそうだ。れんの両親はある飛行機事故で亡くなってしまった。れんの母親はいわゆる駆け落ちをして結婚をしたのだが、母親が亡くなったことによりれんが母親の実家である神宮寺家に引き取られたのだ。財閥唯一の男児だという理由だけで。私の両親はもちろん反対したが、庶民の力では為す術もなかった。引き取られる日のことだ。れんは私の兄だと信じてやまなかった。そこにれんが私の部屋に急に来たのだ。私の部屋に来たれんは私を押し倒し無理やりキスをした。当時小学校3年生の私は何が起こったか分からず固まっていた。否、固まるしか無かった。最終的には私が声を上げて号泣し、れんは「ごめんね」とだけ言い、家を出ていった。引き取られたこと、本当の兄妹じゃないことを知ったのは翌朝の事だった。


 れんって、こんなにイケメンだったっけ? 確かに可愛らしい顔はしてたと思うけど……。まさかまた攻略対象!? でも、私とれんは昔からの知り合いだし……


「あの時は本当にごめん。」


「……いいよ、昔のことだし。」


 本当はちょっと根に持ってるけどね! だからずっと今まで男は敵だ! と思って生きてきたからね。


「僕、かなのこと妹として見れなかった」


 私はずっと兄だと思ってたよ。かっこいい優しいお兄ちゃん。


「でも、ずっと我慢してた。僕、かなのことが好きなんだ。」


「へ?」


 ど、どういうこと……? あかりのこと暗かったかもしれないけど顔見えたよね!? あの美少女みたあとに私には告白!? 告白する相手間違えてる???


「僕、思ったより優秀だったらしくて。神宮寺財閥継ぐことはもう決定事項になったんだけど、それでかなと結婚しようと思って」


 接続詞の使い方間違えてませんか!? 私は田中くんみたいな平凡な子と結婚するんだけど?


「まぁ、かなが僕のこと恋愛対象として見てないのは百も承知だよ。とりあえず明日からは同じ学校だよ。学年が違うから会いにくいかもしれないけど。同じ学年にしたかったんだけどさすがに無理だった。僕が卒業するまでに振り向かせるから。だから、1年以内だね。______最悪監禁すれば済む話なんだけど」


 最後ちゃんと聞こえてるよ! 誰か命を分けてくれ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る