4.

「かなちゃん……」


 私には聞こえてないし見えてもない、何も。黙っているとれいなが手を引いて私たちは靴箱の方向へ向かった。助けてくれたのかな。とにかく後ろからの視線が痛い。今逃げたとしてもあかりとは同じクラスだ。今日から授業が始まったが、席が1番前と後ろなのがせめてもの救いだ。私はあかりに話しかけられてもトイレ、先生に呼ばれてるを乱用し、とにかく逃げ切った。今は教室でれいなを待っている。れいなはクラス長に選ばれたのだ。男子のクラス長はあのイケメン軍団の1人だ。名前は後ほど。ちなみに私は図書委員になった。男子は田中くんという子。イケメンでもない、かといってブスでもない、私が求めていた人物だ。私と同じモブ。担当の先生が体調不良でいないため会議は後日になった。


「あ、かな!」


 急に名前を呼ばれて体がビクッとなってしまった。あかりかと思ったよ。この人は朝の……


「水瀬しゅん」


 私はまた会ってしまったと落ち込んでいるとそれに反して覚えててくれたんだー!!と水瀬しゅんは喜んでいる。漫画だったらカワイイ系のポジションなんだろうなあ。と軽く現実逃避する。


「なんでれいなと一緒にいるの? あかりと仲良いと思ってたけど」


「私は平凡な学校生活を送りたいの。あなたみたいなイケメンといると何されるかわかんないし。」


「僕のことかっこいいって思ってくれるんだ。

 僕、かなのこと好きかも!」


「なんで!!!」


 まさかイケメンに喧嘩売ったらダメだったのか……?


「みんな水瀬財閥と繋がりを持ちたくて面と向かって文句とか言ってくる子いないんだよね。素で話してくれるのれいなとあかりとかなしかいない。でもね、あかりの1番はかなだし、れいななんていとこだし恋愛感情なんて湧かないでしょ?僕、かなの1番になりたいなあ。」


 何言ってるのこと人。勝てる戦しかしないタイプの人ってこと? 私だったら落とせるとでも思ってるのかな。


「水瀬くんはあかりのこと気になってたんじゃないの?」


 サポートキャラっぽく好感度を聞いてみた。


 「友達としては好きだよ! 話しててすごく楽だしね。でも、僕にはかなの方が魅力的だと思うな」


 ということは、あかりは違う人を攻略するって言うことかな。


 「かなもすごく話しやすいよ。ねぇ、僕のことしゅんって呼ん」


 「かなちゃん!!!」


 バンッ! と壊れそうなくらいの勢いで教室のドアが開いた。え、真面目に壊れてないよね? あかりにそんな力あったの?


 「なんで泣いてるの!? 大丈夫?」


 ハンカチを差し出そうとするとなぜかあかりが泣き叫びながら私に抱きついた。ほんとになんで泣いてるの。え、まさか私と水瀬くんの話聞いてた?あかりのこと友達として好きって言う。ということはあかりは水瀬君が好き?

 私は小さい子にするようにぽんぽんと背中を叩いた。


 「えへへ。」


 うん、可愛い。さすが私の幼馴染。

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