2.

「青山中学? それって……」


 あかりが言葉を続けようとしたが先程と同じような黄色い歓声にかき消された。さっきからこの現象はなんなの。


 男子5人? あぁ、漫画とかにありそうなイケメングループか。現実に存在したんだ。そしてあかりの席の周りに座った。え、もしかして……あかりがヒロインの乙女ゲーム? だったりするの? そうだったら、私はモブかな。それかよくてサポートキャラ。だから、平凡な私にあかりみたいなハイスペックの幼馴染がいたのか。


 ということは……私陽キャの人達と関わらないといけないの!? あかりがヒロインだったら絶対注目されるよね? 偏見なのかな。でも、イケメンたちに席囲まれてるし。私は平凡な生活を送りたいのに。


「あ、青山中学のことだけど」


 あ、忘れてた。そうだよこの返答で私がこの乙女ゲームみたいな世界に来ちゃったかどうか分かるんだよね。


「聞いたことないなあ。県外の中学校?」


 え、死んだ?

 ここは私が今まで生きてきた世界じゃないの?私の小学校の友達はみんな青山中学に進学だった。それに、皇学院には私の知り合いが一人もいない。一人もだ。

 担任らしきイケメン(ここ重要)の先生が教室に入ってきたため、あかりは自分の席に戻った。その時あかりはイケメンに話しかけられていたが全て無視。周りの女の子たちから嫉妬の目で見られていた。ゲームだったらこの中の気が強い女の子が文句言いに行くんだよね。


 今日は入学式だけだったのでプリントを配られすぐ解散となった。


「かなちゃん帰ろー!」


「後ろの3人は?」


「え?」


 あかりの後ろにいたのはさっきのイケメンたち……ではなく、怖い顔をした女子三人。あ、真ん中の子美人だ。つり目って憧れるんだよね。


「高橋さん、私と帰りませんこと?」


「ちょっと、何言ってるの!」


 周りの女の子たちが前に出てきてあかりを睨みつけた。


「れいなさんはあなたに言ってないわ!」


 うーん、どうしよ。サポートキャラならヒロインとイケメンをくっつけるのが使命だ。正直言うと乙女ゲームを楽しむって言う気持ちも誰かを助けたり何かを回避したりするという意思はない。


「いいよ、いっしょに帰ろ。じゃあね。」


 あかりは口をぽかんと開けて呆然としている。ごめんねあかり。最低なのは自覚してる。でも、私平凡なら人生を歩みたいんだ。


 れいなというこの子は相澤財閥の一人娘で周りの二人はただの取り巻きということを聞いた。金持ちも大変なんだな。相澤さんには某高級車のお迎えがきていた。この学校の八割は相澤さんのようなお金持ちの子ばかり。私は庶民だけどあかりはどうなんだろ。普通の一軒家みたいだったけど。一緒に帰ると言ったがお迎えが来てるなら個々でお別れだな。


「じゃあまた明日ね」


「何を言っていますの? 乗って下さいませ?」


 精神的に疲れてたからとても嬉しいお誘いだ。ありがとう相澤さん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る