神殿の中で【4】
「ライズ殿、こんなところでアレですが……大型結界石は手に入りましたか?」
「「「!?」」」
「んなっ!? お、大型結界石ですと!?」
「……っ」
アマード氏、本当に、読めない。
まさかこの場であの依頼の事を口にするとは思わなかった。
町長たちと副神殿長の目の色が変わる。
それはそうだ、大型結界石は誰もが喉から手が出るほど欲しい代物。
アマード氏はそれを独占したくて、俺とセレーナに依頼したのではないのか。
少なくともゲームの中のアマード氏はそう言ってセレーナを誑かしたはず。
やはりゲームの中のアマード氏とは、まったく目的が違うと思った方がよさそうだな。
「……確かに依頼の品はあります。しかし、
「
「……はい。それでは……」
元々説明するつもりだったが、スタンディー様の圧がものすごい。
レティシア女史にはすでに話している、俺たちの目的について出来るだけ丁寧に分かりやすく説明する。
そのために、この大型結界石はこの
『神殿』はおおはしゃぎ。
副神殿長は願ったり叶ったり、と言わんばかりの顔になっている。
なんとなくそれが腹立つな。
スタンディー様とルクシエス様はどこか唖然とした表情。
レティシア女史はすでに話しているから、神妙な面持ちだが……アマード氏のあのニヤついた表情は、どういう意味で受け取ればいいのか。
……まさか、こうなる事を見越した上で?
しかしそれがアマード氏に、一体なんの得になる?
「なるほど……そんな事情があったのか」
「ご理解頂けたでしょうか? ルクシエス様には『神殿』が
「え! …………い、いいえ、神殿は
「それはおかしいのではないか? この世の在り方が変わる災いだぞ? 神がそれを我らに教えないとはこれいかに? 『神殿』が『神託』を受けておらず、古龍イヅル様がその『神託』を頂いているのであれば我ら人は神に見放されたとも捉えられる。調べ直してこい!」
「は、はいいいいっ! た、ただいま!」
うわ、すごい。
スタンディー様の一喝でニヤついていた副神殿長が跳ね上がって飛び出していったぞ。
ありがたい限りだが、神殿側には『神託』が来ていない可能性が濃厚になってしまった。
つまり、スタンディー様の言う通り神に人間が見放された可能性も……あるという事……。
「で? アマード……貴様はどういうつもりだ?」
「おや? なにがですかね?」
「ライズ殿に大型結界石を依頼した件だ。……我らの前で話題に出す必要性、貴様の得になるようなものでもあるまい。なぜ今、我らの前で話題にした? どういうつもりだ?」
「そうね。一体どういうつもりなのかしら? 私もあなたに『大型結界石があるから』と『ククルのダンジョン』に行ってドラゴンと戦う事になった。そして、ライズたちに助けてもらったわ。……まさか、そこまで計算していたのかしら?」
「アマード……!」
やはり俺以外もアマード氏の言動に違和感を覚えていたようだな。
まあ、町長になるような人たちだ。
俺よりもよほどそういう事に敏感だろうしな。
「……いや、なに、私もとあるルートから
「…………」
皆、押し黙った。
俺はその『とあるルート』とやらが、とても気になるのだが……。
「では、この合わせ鏡の魔石は……」
「そう、他の町の大型結界石を移動させる時に使えます。八つの町の大型結界石を、大陸中心部である
「それは……俺も師匠やイヅル様にそう伺いましたが……アマード様は、一体誰からその事を……?」
「それは教えられません。そういう約束なのです」
「…………」
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