言葉の代わりに

「愛しているよ」その一言を聞くたびに、胸の奥が苦しくなって息もできない。

 顔を真っ赤にした私を、可愛いなって、少し笑って、頭を撫でてくれた。

 何度聞いても慣れないのよ、その言葉。いつになっても、初めて言われた時みたい。

 私がなにも言えないこと、分かっているくせに、あなた、意地悪そうに笑って「君は?」って尋ねてくるの。

 だから私、悔しくなって、不意をついて思い切り背伸び。あなたのその意地悪な口を、私の唇でふさいだの。

 驚いているあなたの顔を見て、ちょっと勝ち誇ったような気分になって、私はあなたから顔を逸らす。

 恥ずかしいことには変わりないのよ、感謝してほしいくらいだわ。

 これまでだって、これからだって、きっと私はあなたにされるがまま。

 たまの反抗、これくらい許してくれてもいいでしょう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る