第17話

 私と、私の好きなひとが、そのまま脇に避ける。


 舞台上。世界を支配する相手の独白が、あらためて始まった。


「なんで」


「時間がない。君は今から、この脚本を20秒で読んで、クライマックスに備えないといけない」


 脚本。


 渡される。


「これは君の脚本だ。でも、この脚本には君が、いない。だから、ほかのひとに付け加えてもらった。君が、この話の主人公だ」


「でも」


「はいスタート。20秒後に舞台に戻るよっ」


 夢中で、読んだ。


 自分の台詞。


 空白になっている。自分で考えろということなのか。


 読みきった。


 できる。


 できるかどうかは、わからないけど、あて書きみたいなものだけど。


 やらないと。


 私の好きなひとが、私をもういちど抱えて、舞台に走る。


 その腕にしがみつくのが、精一杯だった。

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