第16話

「お前を倒してでも、世界を平和にするんだっ。誰が誰を好きになってもいいっ。男が男を好きになっても、普通な世界にっ」


「倒せるかな。恋人の僕が」


 彼と、彼の恋人。向かっていく。


 殺陣になった。


 ちょっと、立ち入れないぐらいの壮絶さ。本当に、拳と脚が打ち合っている。肉と骨のぶつかり合う、本物の、音。


 主人公である彼が、優勢になる。


 これは、私の脚本通り。


 体育館。


 なにか、おかしい。


 光の当たり具合。さっきから、主人公と彼の恋人に、スポットライトが当たっている。


 ミサイルの音。


 だけじゃない。


 BGMのような音が。SEが。さっきから出てきている。


 彼が、彼の恋人を、制圧した。


 ここで、本来ならば彼が来る。


 でも、彼はいない。


 世界を支配する相手が、独白を始める。


 彼のいないまま、物語は終わる。


 体育館。


 すべての電気が消える。


 え、なに。


「遅くなったな」


 光。


 私の身体が浮き上がって。


 スポットライトが当たる。


「ライターは頂いた」


 彼。


 彼に、抱かれている。


「さあ、ここからが本番だ。こいつはもらっていく」


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