第12話

 はじまった。


 はじまって、しまった。


 私だけに知られていない、脚本。


 序盤は、私が書いた脚本と同じように進んだ。


 世界観の説明。よくある、ゲームの世界みたいな電子世界。


 主人公が出てきて、人を助ける。


 仲間ができる。ここまで5分。内容に代わりはない。主人公は、幼馴染み。


 観客に向かって、ウインクをしている。女子生徒の、黄色い声。あれは、わたしを目の敵にした、女子生徒。


 私の好きなひとは、来なかった。


 来なくても、大丈夫。


 彼の役は、世界を支配する相手に手を貸す、かつての仲間。裏切り者。


 いなくても、世界を支配する相手がそのまま独白すれば成立するように、書いてある。


 でも、手元に脚本はない。あれだけ細かく書き込みして、人が出るところは秒数までカウントしてメモしておいたのに。


 幼馴染みの彼。


 なぜか、私のいる側の脇に避けてくる。まだ場面転換じゃないのに。


「なんで。まだ台詞が」


 後ろから、彼に押された。


「うわっ」

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