第5話

 言われた通りに脚本を書いて。


 できあがったのは。


 物語とは程遠い、何かよく分からないものだった。


 でも、劇団のメンバーのひとが全員、これがいい、ここが最高、クライマックスはもう劇として最大の見せ場、とかって言い出して止まらなかったから、どこも、消すに消せなかった。


 この脚本。どうすれば。


「できあがったね」


「俺が印刷してきます」


「よろしく」


 たぶんアナウンスを担当してたひとが、良い声で喋って、私の脚本をもってどこかへ消える。


「よし。あとは登場人物への役割変換と、あと誰だっけ、ひとり出演交渉だっけか」


「あ、それは」


「あなたの携帯。借りていい?」


「わたしが、やり、ます」


 好きなひとなので、とは、言えなかった。私の好きなひとなら、なんとかして、この演劇自体を、やめさせてくれるかもしれない。


「刷り上がりました。とりあえず25部」


「よし。じゃあ、あとはこれをみんなに見せて、練習するのみよ」

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