第5話
言われた通りに脚本を書いて。
できあがったのは。
物語とは程遠い、何かよく分からないものだった。
でも、劇団のメンバーのひとが全員、これがいい、ここが最高、クライマックスはもう劇として最大の見せ場、とかって言い出して止まらなかったから、どこも、消すに消せなかった。
この脚本。どうすれば。
「できあがったね」
「俺が印刷してきます」
「よろしく」
たぶんアナウンスを担当してたひとが、良い声で喋って、私の脚本をもってどこかへ消える。
「よし。あとは登場人物への役割変換と、あと誰だっけ、ひとり出演交渉だっけか」
「あ、それは」
「あなたの携帯。借りていい?」
「わたしが、やり、ます」
好きなひとなので、とは、言えなかった。私の好きなひとなら、なんとかして、この演劇自体を、やめさせてくれるかもしれない。
「刷り上がりました。とりあえず25部」
「よし。じゃあ、あとはこれをみんなに見せて、練習するのみよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます