第4話

 すごい、劇だった。


 いままで、海外ものの映画とか、恋愛ドラマしか見たことなかったのに。


 中央の演者さんが、立ち回って。そこにスポットライトが当たって。どもったり、台詞を間違って言い直したり、してるはずなのに。それすらも、劇の一部に見える。


『以上で、公演は終了となります。ご静聴、ありがとうございました。カーテンコールは行われませんので、そのままご退場ください』


 アナウンスをかき消していく、拍手の嵐。自分も、立ち上がって拍手をしていた。


 涙。


「え、そんな泣く?」


「すいません。わたし、こういうの、みた、こと。なくて」


「いまからあなたも、あれと同レベルの脚本を仕上げることになります」


 あれと、同レベル。いま、そう言ったか。


「いいですか。心に刻んでおいてください。圧倒的に甘やかしますからね」


「え?」


「やさしくする。それがうちの劇団なので」

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