第7話:魔導王国ベルイナ
こんな話を聞いたことがあるだろうか?
そう、ある魔王の物語を。
これは遥か昔、その魔王は世界を……。
おっと、ここで結末を言うのはつまらない。その魔王が何をしたのか、その答えはページを開けば分かる。
ただ言えるとすれば、幸せな結末かは分からないということだ。
*******
私は魔王イアとして、今度こそ世界を救う。そう決心した。けど、
まずどうしたらいいか分からない!! はっきり言って私は頭が悪い。迂闊に統治してやるー!! 飛び出せば、二の舞に合うだけだろう。
いろいろなプランを考えるも浮かばない。そもそも一人でなんか無理だ。
私がそんなことを考えていると…
「嬢ちゃん。いいや、魔王イア。とりあえずやるつったって、今の段階じゃ何も出来ねぇ。だからついてこい」
「どこに?」
「ベルイナ王宮」
「えぇぇぇ!!」
私は、疑問に思いながらも馬車に乗ると、おじさんは手早く手綱をとり、
馬車を進めた。
ベルイナ王宮? そんなとこ私達なんかが行って大丈夫かな?
おじさんもただの行商人でしょう? 殺されるんじゃ? その時は、私に多分秘められてる隕石の技の練習台に……。
物凄いスピードで森を抜け、野を駆ける。そして日が暮れ、辺りが見えなくなった頃……金で装飾された城が目立つ街に着いた。
駐馬場に馬車を置き、街の中を少し歩いた。そして私は、今、
「これ可愛い!! これも! これも!」
女子高生がよく好むであろう、変な置物を売る店にいた。
「これとこれ! 特に良い!」
私が気にいったのは、逆立ちをする人の置物と、バケツを被ってびしょ濡れになっている人の置物だった。
「でもお金が……。」
そう私は無一文。買えない。がっかり。
私ががっかりしていると、質屋に行っていたおじさんが戻ってきて…
「おう、どうした? これほしいのか? なら、ほれ!」
そう言っておじさんが渡してきたのは、薄汚れた布の袋に入ったお金だった。
「護衛代だ」
「あ、ありがとう!!」
私のテンションは再び上がった。そして、
「これくださーい。」
可愛い置物を手に入れた。
「してもよぉ。これのどこが可愛いんだ?」
おじさんは首を捻り私に問う。
しかし、そんなの決まっている。
「マジ可愛いでしょ! この逆立ちの垂直っぷりとか、見事な水の被りっぷりとか!」
「お、おう」
おじさんは少し引き気味だが、本当に可愛い。おじさんがじゃないからね。
「ところでもう日が遅い。とりあえず宿に行くぞ」
そう言っておじさんは歩き出した。私はそれに続く。
「で、どこに泊まるの」
私が問うと少し間があいて急に立ち止まり、
「ここだ」
例の城を指差した。
「えぇぇ、まずいよ。ここはいくらなんでも宿じゃ……」
城、多分王宮に泊まるというおじさんに困惑したが、
おじさんは「心配ねぇ」といい、言った。
「心配も何もここは俺の家だからな」
「えぇぇぇ!!!」
衝撃の事実に戸惑っていると、城の中から人が出てきて…
「おかえりなさいませ!! 王子!!」
「おう。今日は客を連れてきた。すぐに親父に合わせてぇ。」
「もしかして、契る約束を交わした女性……?」
「んな訳あるか! とりあえず中行くぞ!」
「は、はい。」
おじさんが王子? このおじさんが? それに間違いでもおじさんの愛人に見られたのは癪だ。んー分からない。この世界情報多すぎぃ。とりあえず一旦整理しよう。まず聞くべきは……
「何でおじさんが王子? 王子って年じゃなさそうじゃん。」
「それはですねぇ……」
私がそう聞くと、おじさんのそばにいたおじさんが言う。
「面白い話なんですけどねぇ、王子は昔から顔が年齢の割に幼く、わざと服を汚したり髭を伸ばして渋みを出そうとしているんです。特にわざと太ろうとして胃の調子を崩したときなんて……」
「うるせえ! 気にしてるんだから言うんじゃねぇ!」
珍しく顔を赤らめ心底照れているように言う。
「はぁ。で、おじさんはいくつなの?」
「年か? 今年で二十だ」
え? 二十? その見た目で? 無理があるって。逆鯖を呑む? 無理があるって!!
「信じられないかもしれないですが、紛れもなく王子は今年で二十です」
えぇぇぇ!! ここ最近というか色々あってあれだけど一二を争うほど驚いたよ。
「それはそうと王子。王と拝謁なさるのなら……」
「ああ、わかってるよ」
おじさん?は頭をかきむしりながらこっちを向いて言った。
「先行ってろ。また飯ん時な」
そう言うとおじさんは一人で長い廊下を歩いていった。
「さて。ではお部屋を案内します」
私は多分使用人の人に付いていった。
そして、大きな部屋に案内された。綺麗に装飾され、広い部屋。なんと言っても、お姫様部屋定番の名前はよくわからないけど、でかくてふかふかのベットがあった。
「ここは、お客様のお部屋になります。お気に召さないようでしたら別の部屋もご用意できますが……」
「いいえ、ありがとうございます。ここで良い。いや、ここで良いです」
「承知いたしました。ご夕食の時またお呼びに上がります」
「はい」
私は夕食までにやらなくてはいけないことがある。
それは……
「でかーい!! 気持ちィィ!! ふわふわぁぁ!! 美味しいィィ!! 面白ーい!!」
でかいお風呂に入り、ベットに入り、お菓子を食べながら読書をする。
この部屋には銭湯に負けないくらいのお菓子や様々なジャンルの本があった。
となれば、こうだ。
ちなみに私が読んでいるのは、恋愛系だ。やはり場所が違うと文化が違う。
とても新鮮で面白い。
とまれ、こうして時は過ぎ……部屋にノックの音が響く。
「はーい」
鍵を外し出る。すると、メイド服を着た女の人が、
「ご夕食に際して、お召し物を用意してまいりました」
メイドさんを部屋に入れ、服? いやドレスを着る。そしてメイドさんが、手にしていたブラシで髪を整え、化粧をする。
「どうでしょう?」
鏡を見るといつもより三割増しで可愛い私がいた。
「おぉぉ」と、思わず声を漏らしてしまう。
「お客様。ご夕食の準備ができましたのでお迎えに上がりました」
再びノックの音が響き使用人のおじさんが現れる。
私は、その呼びかけに「はい。」と返事をし、後を付いていく。
「はぁぁ。はぁぁ」
私は今超緊張している。食事のマナーとかわかんないよぉ。
「着きました」
使用人のおじさんが食事場の大きな戸を開ける。私はつばを飲み込む。
「し、失礼します」
扉の先にいたのは、髭を長く伸ばし奥の一番大きい椅子に座るおじさん。
そしてその隣の美しい婦人。顔の整った好青年。そして、体に見合わない顔をした男性がいた。
まさかあれおじさん? 話には聞いてたけどあれはwww
「よくぞ来た。まあ、座れ」
「は、はい」
王様らしき人に指示された椅子に座る。
「事情はアレスから聞いておる。気を使わずに食事を楽しんでくれ。」
おじさんアレスっていうんだ……。
ふと周りを見渡すと、皆手を組み何やら祈りを捧げている。私もそれに習ってやり王様の、
「アンイアンテ。」
という言葉で、食事が始まった。
食事はどれも絶品だ。特にこのお肉が酸味と辛味がうまく調和していて凄く美味しい。無限に食べれてしまう。
皆の、皿が白くなった頃、王様が言った。
「お前は魔王だと聞いた。そして事情も聞いた。そこでだ。単刀直入に言おう。私は探り合いや無駄な話し合いは好まない。今の貴様は弱い。まだ己の力も知らず、世の中も知らない。」
王様の正論が刺さる。そのとおりだ、私は何も知らない。
「五年だ。私の見立てでは五年で大戦が始まる。だから三年、近隣諸国と合同で作った学園に通え。そして学べ、魔王としてどうあるべきなのかを!」
学校か。本当に統治するなら学は必要。それはわかる。わかるが……。
「私がこうしているうちにも苦しんでいる人が…。」
私がそう言うと王様はこっちに来て言った。
「もしお前が死に戦争に敗れたらどうする! より多くの人が死ぬ!」
正論だ。でも……。
私は王様の威圧と正論に萎縮しながらもそれが正論であるということだけはわかった。
「それにもう連絡はとってある。早ければ一月で防衛体制が整うだろう。
だから学べ。それが今お前のすべきことだ!!」
そう言うと王様は席に戻っていった。そして机に肘を付き高らかに宣言する。
「もし三年経ってお前が魔王としてふさわしいのであれば、我が国は魔王の傘下に入り、 『魔導王国ベルイナ』 として名乗りを挙げる!!」
その王様の宣言を聞き、城内がどよめき出す。そして、
「期待している」
と、言葉を残し食事場を後にした。
かくして、私は世界を統治する力を得るため三年間学園に通うことになった。今度は責任重大だ。遊びじゃない。しっかりしないと。
あと、ちなみに私は j、何になるのだろうか?
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