第5話 クラフトは、なかなか楽しい
こっちに来てから2日め。
今日は装備なんかを買うため出かけることにした。
おいこらどうした! なんでこんな時に希望の力が働くの!
そんな事がないように、できるだけ準備しとこうって思ったんだ。
朝食の時にヒナに聞いたんだけど、希望の力はマイナスにも働くことがあるって。
つまり俺がなんかヘマすると世界の破滅が近づいちゃうこともある……。
かといって動くのをためらうのは間違ってるような気がする。
俺が行動することでしか、世界の破滅を防ぐことはできないんだから。
俺とヒナがむかってるのは装備屋だ。武器と防具を売ってる。
2人とも普段着のままだから、防具としては役にたたない。
普段着を戦闘でボロボロにするのもイヤだし。そういうわけ。
ヒナが言うには、武器は俺が作ったほうが良いものができるらしい。
だけど防具は、数と種類が多すぎるから店で買ったほうが早いんだって。
そんなこんなで、昨夜、ヘルプにあるクラフト系の情報を読みまくってきた。
あくまで知識だけの付け焼き刃だけど、だいだいの所は理解できたと思う。
ぶらぶら町を歩きながら装備屋をさがす。
「俺は職業が魔剣士だから、剣を中心に戦うことになるよな? ヒナはどうなんだ」
「ボク? ボクは無職。ボクに戦う力はない」
「えっ! マジ?」
いきなり出だしでコケた。
「最初に案内役って言った。ボクは世界を案内するだけ。あれこれするのは春都の役目」
「でもスタンピードの時、魔法玉を使っただろ?」
「あれは春都にあげただけ。ボクも玉を投げるくらいはできるけど。でも剣とかで戦うことはできない」
こいつは困った。
密かにヒナのこと戦力と思ってたんだ。
でも魔法玉を投げるだけでも、めっちゃ強いような……。
「魔法玉って、在庫はどれくらいある?」
「ポーチ内の無限収納に、すべての魔法に対応した玉が、それぞれ1万個ずつ入っている。しかも使ったぶんは天界から自動補填される」
「それ、俺の
それ使わないの損だろ。
「凄くない。ボクが魔法玉を使うときには、そのつど春都の具体的な指示が必要。そう天界で決められてる。だから魔法玉をふくめて、ぜんぶ春都の能力。だからボクより春都のほうが、ずっと凄い」
そんな制限があるのか……。
考えてみれば、ヒナが俺を守ろうと魔法玉を無制限に使ったりしたら、それこそ世界が破滅してしまう。なにしろ、この世界に存在するすべての魔法を使えるんだから。
「わかった。じゃあ俺が指示するときは従ってくれないか? そうじゃないときは、状況に応じて最低レベルの魔法玉を投げて支援してほしい。あとは俺がなんとかするから」
って、見栄はって偉そうに言ったものの……。
俺、状況に応じた指示、きちんとできるんだろうか?
いや、こっちきてからの俺は、以前の俺じゃない。
肉体が変わったんだから、中の人もそのうち変るはず……だよな?
だから、きっとできる。
そう思いたい……うう、心配。
「了解した」
ヒナはいつもどおり、信頼しまくった顔をしてる。
俺……見栄はった手前、もう表むきの態度を続けるしかなくなった。
ますます胃が痛くなる。
「あ、そうだ。戦闘に参加しなくても、ヒナが魔法玉でたおした魔物ぶんは、ヒナに経験値がはいるんだよな?」
「はいらない。ヒナにはステータスがない。だから職業もない」
「ええええ――っ! そんなのある? ってことはレベル1のままってこと!?」
戦う力がないって聞いて衝撃うけたばっかなのに、またコカされた。
騒ぎすぎて、通りにいる数名の住人の注目をあびる。
主婦らしい女の人がくすくす笑ってる。
は、恥ずかしい……。
「そう思って間違いない。ボクは成長できない」
「それじゃ、すぐ死んじゃうじゃんかよ!」
「すぐ死ぬ。でも1分で肉体は再生する。再生中は光につつまれるからグロくない」
ちょっとドン引きしかけた。
ヒナがスプラッタ状態になるなんて、俺が死ぬよりイヤだ。
「ああ、良かった……。でも、死ぬ時は痛くない? それより前に、すぐ大怪我しそうで心配なんだけど」
「死ぬまでは肉体があるから痛い。でもボクは我慢する」
これはダメだ。
ヒナに痛い思いなんてさせられない。
なんとしても俺が守らないと。
でも俺、本当に守れるんだろうか……。
そんな感じで頭ぐるぐるしていると、やがて装備屋の店先についた。
中にはいると、ゲームでよく見るドワーフのおっさんが店番をしている。
「買いもんなら勝手に見てくれ。鍛冶の注文なら、注文書に必要なことを書け」
職人らしく、すごくぶっきらぼう。
服装も地球でいうデニム生地のオーバーオールだし、ぶっとい腕にはあちこち
「装備屋だけじゃなく、鍛冶屋もやってるの?」
「見りゃわかるだろ。こんな小さい町じゃ、兼業しないと人手がたりなくなる。というより、ドワーフは鍛冶が本業だ」
「それは知ってるけど、大変じゃない?」
いや、知ってるのは地球のゲーム内での知識だろ、べしっ!
つい自分ツッコミしてしまう。
「戦争で若い男が出はらっちまったんだよ。だから町にのこってる野郎どもは、自分たちで町を維持しようと一所懸命なんだ……おっと、冷やかしは御免だぞ。用件があるならさっさと言いな」
口は悪いし接客態度も悪い。
なのになぜか憎めない。
「俺は革装備にする。初心者用の革装備を見つくろってくれない?」
「おまえら初心者か。どこからきたか知らんが、よくまあ、これまで生きてこれたもんだ。そんな軽率なやつは、いつ死んじまうかわかんねえ。だから、すこし上級のやつをそろえてやる」
そう言いながら、そそくさと展示してある防具に手をのばしてる。
「ヒナは、あそこにある魔導服でいいかな? それとも革装備?」
「ボクはこのままでいい。この服は汚れないし破れない。防御能力はないけど」
「だから、それがダメなんだよ。怪我なんてさせたら俺が後悔する」
「…………」
無表情なのに、ものすごく不満なのがわかる。
「うーん、それなら……そうだ! 防具がいらないなら、
内心ビクつきながら『おっさん』って呼んだけど、まるで気にしてないみたい。
日頃からそう呼ばれてるのかな?
「おう、引きうけた。値は張るが……女の子は大切にするもんだ」
そう言いながら手ぎわよくアクセサリーを集めていく。
俺の装備は、急所部分に革当てがついた長袖の革ジャケットに、おなじく革当てのついたボトム。長剣を背負うための革ベルト。腰のベルトのバックルには根性1・2倍の付与までついてる。
根性1・2倍?
鑑定してみたら、HPが減りにくくなる付与魔法みたい。
靴はスニーカーみたいな革製の冒険靴。編みヒモも革製だから頑丈にできてる。
なんで革製の鎧とかにしなかったかといえば、動きを制限されたくなかったから。
パッシブスキルで身体強化5倍と魔法強化5倍がかかってるから、なるべく身軽にしたほうが機動性があがると思ったんだ。
ヒナには、加速の指輪と身体強化の指輪、思考加速のイヤリング、状態異常をふせぐ花をかたどった頭飾り、これが親父さんがそろえた品。
俺が自分で選んだのは身代わりペンダント。
すごく高かったけど、1回だけ死を回避してくれるんだから買うことにした。
そのうちクラフト系スキルや付与魔法のレベルが上がれば、購入品にいろいろ機能を追加できるかもしれない。もしかするとコピー品とか上級品を作れるかも?
それが前提になってるから、いまはお金を惜しまないほうがいいって思ったんだ。
「ボクの体を守るのは、魔法玉があるからいらないのに……」
そう言いながらも、買ってもらった指輪をはめて嬉しそうにしている。
俺が選んだペンダントを首にかけてやった時なんか、真っ赤になってモジモジしてた。
なんだか……本当にヒナが人間に思えてくる。
防具がそろったあと、クラフト系のスキルで武器を作りたいと言って、材料になる数種類の金属と皮を購入する。レシピがわかってれば、もっと絞れたんだけどね。
きのうヘルプで調べた結果、俺は錬金術にすごく興味をもった。
もともと理工系出身だし、会社じゃ開発してたんだから、こっちが本業みたいなもんだ。
とくに錬金術は無機・有機化学につうじるものがあるから、俺の専門分野っていってもいい。こっちの世界にも元素表があれば……あ、自分で作ればいいか。鑑定もってるし。
クラフト系のスキルは、すごいスキルを持っていても、レシピを知らないとなにも作れない。ヘルプでこれを知ったとき愕然としてしまった。
バトルだけですべてがうまく行くって世界じゃなかったんだ。
総合レベルをあげると同時に、クラフト系のレベルをあげる必要があるってこと。
もともとインドア系だった俺、こっちのほうが熱中できそう……。
だから……今日は無理だけど、時間があったらいろいろレシピを教わりたい。
なければ、自分で調べて俺専用のレシピを作れるかも?
そう思った。
材料があまっても備蓄にまわせばいいから、かなり多めに買った。
今後は魔物を狩ってクラフト材料を調達するつもり。
だけど今日のところは、これで間にあわせる。
「もういいか? ぜんぶで白金貨1枚と金貨12枚だ。
あ、やっぱいい人だ。
暗算で合計したら、金貨4枚もまけてくれてる。
つぎに道具屋と薬屋をかねてる店に行った。
なんと、すぐ近く。
どうやら店舗は町の中心部に集まってるようだ。
「いらっしゃい」
カウンターに現れたのは鹿顔の亜人種だった。
これは予想してなかったので、ちょっとびっくり。
【スターラ】と名のった主人は、自分は錬金術師だと自己紹介してくれた。
とりあえずHPポーションとMPポーションの予備を買いこむ。
スターラさんのすすめで毒消しと麻痺止めも買ったら、それぞれの初級ポーションのレシピを教えてくれた。
「初級ポーションはだれでも作れるんですけど、それにも出来不出来がありますし、たまにできる中級や上級ポーションは貴重です。まあ、錬金術師の作るものにはかないませんけどね」
おお、さりげなく自分は凄いと言えるとこなんか、さすが専門家って感じ。
初級ポーションの作り方を教えてくれたのも、素人の作った品じゃ商売にはならないって確信してるからだろうな。
「錬金スキルを持ってる冒険者って多くないの?」
「錬金スキルのサブスキルになる【調合】スキルなら、けっこう持っていらしゃいます。でも、レシピと材料をそろえるだけでも手間ですから、すこしぐらいお金がかかっても、店で買われる冒険者のほうが多いんですよ」
俺の【錬金師匠】、錬金スキルの上位バージョン。
他のクラフト系も、ぜんぶ上位スキル。
もう自分がふつうなんて思わないけど、やっぱ指摘されると異常な自分を再確認してしまう。
「冒険者以外の町の人も買いにくると思うけど、見た感じポーション売ってるの、スターラさんの店だけだよね? ずいぶん儲かってるんじゃない?」
ちょっと
「中級ポーション以上は、錬金スキル持ちじゃないと作れませんから、たしかに私ひとりだと大変ですね。でも、ここは場所がらから、需要が日によって大きく変動するんですよ」
んー。
ちょっと混乱した。
調合スキルは錬金スキルのサブスキル。
サブスキルっていうのは、ようはメインスキルのウインドウ内でおこなう個々の作業――たとえば錬金の場合、薬学の【変性】【分解】【調合】【合成】【精製】、鍛冶の【鋳造】【鍛造】【精錬】【焼結】【冶金】【融解】……などがサブスキルになる。
本来ならメインスキルを覚えたあとじゃないと、サブスキルも使えないはず。
なのにサブスキルは単体で(あたかもメインスキルみたいに)使えてしまう。
というより……。
この世界の一般人のスキルは、ほとんどがサブスキルといっていい。
これ、変じゃない?
この世界のスキル大系がおかしいって言えば終わりだけど、たぶん女神リアナが適当にいじくりまわした結果だろうな……。
おっと、いらんこと考えてたから、スターラさんを待たせてしまった。
「なんで日によって需要がちがうの?」
「警備隊が魔物討伐とかにでれば、怪我人も大勢でます。そう言ったときは、作り置きした品を警備所に納品してます。お客さんがゼロって日もありますので、そんなときは裏で品物を作ってるんですよ」
スターラさん、人はよさそうだけど話がながいし脱線する。
もともと話すこと自体が好きなんだろうな。
「ふーん。商売するのって大変なんですねー。それじゃ……もし俺がポーション作ったら、そのときは品物を見てくれます?」
「それは構いませんよ。錬金術に興味をしめしてくれるお客さんは、いつでも大歓迎ですから」
「それじゃ、また」
ここでの対応も、なんとかうまく行った。
内心じゃドキドキしてたけどね。
「春都。これで用事は終わり?」
スターラさんの店では黙ったままだったヒナが、ようやくしゃべった。
「うん、終わり。そろそろ昼だから、なんか買って食べようか」
「賛成する」
あきらかに喜んでる。
どうやら、お腹が
広場にある出店で昼食を買う。
宿は2食付きだから、昼飯は自前で調達しなければならないんだ。
買ったのは、インド料理のナンみたいなパンに、あま辛く焼いた兎肉と野菜をはさんだもの。ものすごくいい匂いがしたから、迷わずこれにした。
そとで食べてもよかったけど、すこし疲れたから宿へもどることにした。
部屋で食べ終えると、いよいよ武器を作ることに。
俺のスキルに錬金師匠1があったから、ヒナの言うとおり、市販品より上等の武器ができそうな気がする。問題は、どうやってつくるかだ。
「ヒナ、武器をつくる方法を教えてほしい」
部屋の中にある木製の丸テーブルの上に、数種類の金属インゴットと革の束をおく。
「なにを作る?」
「まずは長剣だな。両手剣にするつもりだけど、大剣ほどごつくなくていい。背負ってもいいし、腰でもなんとか下げられるくらいのやつ」
ヒナはテーブルの材料をちらりと見ると、頭の中でなにかを参照するような仕草をみせる。
「うん、
「なに、その強そうなの」
「神鋼剣は初心者用では最強」
「そんなの本当につくれる?」
「言われたとおりにして。そしたら完成する。レシピは教える。でも教えるのは今回だけのサービス。つぎからは自分でレシピを手にいれて。ぜんぶボクが教えると、世界のバランスが崩れる」
「わかった」
世界のバランスが崩れるってのは大袈裟じゃないかって思ったけど、ヒナが言う以上、なんらかの影響があるのは間違いないはず。それなら言うとおりにする。
「ではまず錬金ウインドウを開く。そこにある【精錬】を選択。鉄のインゴットから鋼鉄を精錬する」
なんもわからないので、言われたとおりにする。
木のテーブルの上で作業して大丈夫かって思ったけど、融解や精錬はすべてウインドウの中で行なわれてるから、外にはまったく熱が漏れてこないし火種も飛ばない。
「鋼鉄できた」
精錬するのにMPを50消費した。
だけど、いまのMP値からすれば誤差にひとしい。
「では鋼鉄とミスリルを精錬。神鋼という名前の合金を作成する」
「鋼鉄よりほかの金属を使ったほうが、なんか強いのができそうな気がするけど……」
「いまの春都の錬金レベルだと、ほかの合金は精錬できない。クラフト系スキルは、総合レベルとか戦闘経験値は関係ない。たくさんスキルを使うとレベルが上がる」
「んー。ステータス見てて思ってたんだけど、俺のスキルと魔法、なんでぜんぶレベル1なの? ほかの金属を精錬できないのも、これに関係があるんだろ?」
「女神リアナは、春都にチートなスキルと魔法をやると約束した。それはきちんと果たされてる。春都の錬金師匠スキルは、錬金レベル10でカンストしたあと限界突破しないと手にはいらない上位スキル。そのレベル1」
「カンストした後のスキルなんだから、それまでのスキルで作れるものは全部できるんじゃない?」
「その認識はあってる。だけど神鋼を作れるのは上位スキルだけ。錬金師匠1で作れるようになる。ちなみにミスリル/オリハルコン/アダマンタイトとか、レア素材同士を組みあわせて合金を作れるのは錬金師匠5から。だから、いまは作れない」
「努力しないと欲しいものは手に入らない……ってわけか」
「ちなみにタングステン/チタン/ジルコン/炭素セラミックとかもレア素材。くわしく知りたければ、あとで錬金のヘルプで勉強すればいい」
それは後回しだな。
いまは当面つかう武器を手にいれることに集中する。
鋼鉄とミスリルの
本来なら加熱や常温にもどるのに時間が必要だろうに、すぐ固まって冷えた合金としてとりだせる。いやー、便利だ。
「わかったよ。ほら、神鋼できた」
「完成した神鋼をつかって両手持ちの長剣をつくる。鍛冶を選択する」
鍛冶のサブウインドウに神鋼を入れて【鍛造】をえらぶ。
1回鍛造するごとにMPを消費する。
今回は自動鍛造を選択したから、5回連続でハンマーが打ちつけられ、激しく火花が散る画面効果が発生した。
ものの10秒くらいで神鋼剣が完成する。
見事な
無駄な装飾がまったくないのも、初心者むけの剣らしくて好感が持てる。
「錬金1でつくれるのは鉄の鋳造武器まで。春都の錬金師匠1は上位スキルだから凄いのができる。それに春都は、いま錬金師匠2になった。つぎはもっと良いものをつくれる」
これもチートか。
それにしてもクラフト系スキルって便利だ。
なのにあんまり
やっぱ初心者が簡単に金を稼ぐとしたら魔物狩りってことか。
クラフト系の生産者が、魔物狩りとか素材採取より稼げるようになるのは、ずいぶん後になりそうな気がする。
そこを俺だと短時間でクリアできるってのが、ヒナの言う凄いところなんだろう。
「インベントリから剣をとりだして装備。両手で持って振ってみる。棒を振るのとおなじでいい。すぐ補正がはいる」
取り出してみると、むっちゃ重い……。
細身の両手長剣なのに、持っただけで筋肉が震えはじめる。
俺、身体強化5倍が常時かかってるはずなのに。
「てやっ!」
全身の力を使って、上段から斜め下へ振りおろす。
「春都、剣術皆伝2になった」
ふいに剣が軽くなる。
細い棒を振るくらいまで楽になった。
これが武器スキルの威力か……馬鹿にならんな。
「これからは剣で戦う。ありがとな」
ためしにインベントリに最初からあった木の棒と神鋼剣をくらべたら、威力が10倍以上ちがってた。付与できる魔法も増えてるし、もう良いことばっか。
なんかクラフトって病みつきになりそう。
「ヒナには初心者むけの木の杖がいいかな?」
「いらない。邪魔」
ううう……速攻で却下されてしまった。
邪魔とまで言うんだから本当にいらないんだ。
しかたない、あきらめる。
「春都、ボクをパーティーに入れてほしい。春都が解除しないかぎり、ずっと入っていられる」
「パーティーにはいると、なんか特典あるの?」
「魔法玉にはパーティー全員に適用されるものがある。1個で全員に効果がある」
「そりゃ利用しないと、もったいない」
「パーティーについて重要な事があるから、このさい教えておく。これから先、春都のパーティーに参加する者には、もれなく春都の経験値獲得10倍スキルが適用される。ただしステータスのないボクには関係ない」
経験値獲得10倍って、パーティースキルだったんだ!
どうりで必要経験値10分の1と分かれてるわけだ。
でも……こんなの知られたらパーティー志願者が殺到するぞ。
もう最優先で秘匿決定だな。
ヒナにやり方を教わってパーティー登録する。
「これでなんとか、ヒナも一緒に旅ができそうだな」
「心配してくれてる?」
「あたり前だ。ヒナは俺が出あった初めての仲間なんだから」
そう、生前の俺のときもふくめて、本当に初めての仲間。
「……ありがとう」
そう答えると、ヒナはほんのり嬉しそうな表情を浮かべてる。
それでも最初の無表情とは大違いだ。
この変化、なにが原因なのか、すこし気になった。
「よし、これで準備完了だ。あした冒険者ギルドに行って、俺たちにもなんかできないか探ってみよう」
気がつけば部屋の窓に夕日が射している。
「そうだな。食堂に行くか」
俺は武器を調達できた嬉しさで、すこし有頂天になっていた。
そのため食堂で待ち構えていたトラブルに気がつかなかった。
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