第5話:フェアリー族

 私が戸惑っている間に、気配はどんどん近づいてきました。

 私が攻撃も防御もしない事に、敵意がないと判断したのかもしれません。

 彼らが考えていた通り、私には敵意などありません。

 私の心にあるのは戸惑いだけでしたが、これは危険な事なのだと後で思いました。

 追手が私を殺そうとしているかもしれないのです、

 迎撃も護りも考えていない所を襲撃されては、どれほど大魔力を持っていても無意味ですから、もっと注意を払わないといけません。


「聖女様、どうか弱い私たちをお助け下さい。

 このままでは、私たちは滅んでしまいます」


 私の目の前に現れたのは、絶滅を噂されているフェアリーたちでした。

 人間が愛玩用に狩り集め、暗く残虐な愉悦のために虐殺していったという噂のある、とても可愛い生き物です。

 恐らく魔力を使っているのでしょうが、華奢な羽を使って飛ぶことに出来る、人そっくりの小さな生きた人形。

 それが人間から見たフェアリーなのです。


 この身体の元の持ち主は、フェアリーを虐める趣味はありませんでしたが、王侯貴族の多くは、愛玩動物を虐待して憂さ晴らしをすることが多いのです。

 下位の貴族ほど、高位貴族に嬲られ苦しめられています。

 その恨みを高位貴族に向けることができないので、愛玩動物を虐待するそうです。

 元のラミア嬢がフェアリーを虐待していなかったのは、多くの人間を虐待して満足していたからかもしれません。


「分かりました、何ができるか分かりませんが、手助けしてあげましょう」


 私はこれでも結構動物が好きなので、可愛いフェアリーに助けを求められているのに、無視したり逃げたりはできません。

 何ができるか分かりませんが、やれることはしてあげたいと思ってしまいます。

 私の所に来たフェアリーに案内されて、フェアリーの里に行きました。

 そこはラミア嬢の記憶にある森ではなく、明らかに特殊な力が充満していました。


「ここは神様が私たちにくださった最後の楽園なのです。

 人間や獣に殺された、フェアリーの魂が再生できる場所なのです。

 ここが闇の者に奪われたら、フェアリーは本当に滅んでしまいます。

 どうか聖女様のお力で闇の者を滅ぼしてください」


 私がフェアリーの願いをかなえるなら、闇の者と戦わなければいけません。

 私は戦いの専門家ではありませんから、どんな相手かも分からない闇の者と戦うのは、正直とても恐ろしいし、勝てると断言する事もできない。


「私は自分の力が分からないので、上手く使う事もできないの。

 これでは貴方たちの言う闇の者に勝つ事などできません。

 戦い方を教えてくれるか、闇の者を斃す前に、闇の者を防いだり封じたりして時間を稼ぎ、その間に戦う方法を学びたい。

 フェアリーたちは手伝ってくれるの?」

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