第4話:大魔力

 まあ、前の身体の持ち主、本当のラミア嬢は大魔力の持ち主だった。

 ボードン公爵家に相応しい大魔力の持ち主だった。

 そしてそれを鼻にかける傲慢な性格で、周囲から嫌われていた。

 嫌われている事を気に掛ける事など全くなく、むしろ公爵令嬢の地位を振りかざして相手を苛め抜き、嫌われることを愉しみとしていた。

 私には全く理解できない性格だったが、高位貴族には大なり小なりその傾向があるり、高位貴族とは周囲に迷惑を振りまく存在なのだ。


 まあ、今の、私が憑依した状態には関係ない事です。

 過去と現在が別の人間というのは、社交界で生きていくなら色々と問題が起きるでしょうが、問題を考えて対処できる状況ではないのです。

 もう厳罰を受けるしかない状態では、逃げる以外の選択はありません。

 社交界とは全くかかわりのない、庶民の中で生きていくしかないのです。

 だからこそ、魔法がどの程度役に立つのか調べたかったのです。


 最初は料理のための火を熾す事から始めて、徐々に強力な魔術を試しました。

 ラミア嬢には天賦の才能があったようで、どれほどの大魔術を試そうと、一向に魔力が尽きる気配がありませんでした。

 元のラミア嬢が思いもつかなかったような、五大元素の魔法を組み合わせる、複合魔法まで試しましたが、とても楽しかったです。


 それ以外の、これからの生活に必要な、創造制作系魔法も試してみました。

 ウェブ小説で呼んだことのある、地中の成分を集めて生活費の足しにする事を試しましたが、それがとんでもない結果を生み出しました。

 最初は鉄や銅を集めたのですが、それが成功すると銀と金を集めてみました。

 想像以上の量が集まったので、今後の生活費の心配がなくなったくらいです。

 その後でミスリル銀とオリハルコンまで集められた事には、正直驚愕しました。


 興が乗ってしまった私は、そこで止めることができずに、武器の製作にまで手を出してしまい、ニッケル・亜鉛・鉄・銅・銀・金・ミスリル銀・オリハルコンを合金にしたり、それぞれの特性を生かすように重ねてみたり、試しまくりました。

 ラミア嬢は武芸の鍛錬などしていませんので、上手く武器を扱う事はできませんが、桁外れて強力な武器があれば、それだけで生き残れる確率が跳ね上がります。


「聖女様、聖女様、聖女様。

 どうか聖女様の御力で私達をお助け下さい」


 遠くから、私の知覚範囲の限界付近から、助けを求める声が届きました。

 多くの生命からの、真摯な願いが伝わってきましたが、面食らってしまいました。

 極悪非道を重ね、処刑目前で逃げ出した私の事を、聖女といっています。

 いったい何事が起ってるのか、とても疑問に感じてしまいましたが、これが誰かの罠という可能性もあり、どうすべきか直ぐに判断できませんでした。

 

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