第6話 パパはドラゴンスレイヤー④
「これをつけてくれ」
フェンリルはルナとカレンにマスクを渡すと棚から缶をひとつ取り出した。
工具でそれを開けていくと、なんとも言えない酸っぱい匂いが辺りにひろがる。
「く、臭いですわ!」
カレンがたじろぎ慌ててマスクをつける。
「人体に有害だ。あまり吸わないように。」
そう言いながら缶をさらに二つ取り出す。ルナが中を見ると銀色の液体が詰まっていた。
「よく混ぜてからクリスタルに塗っていくよ」
「ひぃ!綺麗なクリスタルが台無しですわ」
フェンリルが手本を見せるようにクリスタルの表面にベタベタとその液体を塗りたくっていく。
「あ、そうだ」
気がついたように専用の帽子を渡す。
「この帽子に髪を全部入れて。2人とも長いから。武器につくと後々面倒だ。」
ルナはため息を吐く。
「はぁ〜あんたは。そこで"綺麗な髪が汚れたら大変だからね"くらい言えればモテるのにねぇ」
そう言いながら帽子を受け取る。
「別にボクはモテたくなんか!」
「それよりフェンリル、あなた何か私に言う事は無いの?」
そう言ってルナは顔をきゅるんと傾ける。いつもとは違うツインテールの髪が、少し可愛い印象があるはずなのだが……
「な、なんだ?!特に無いけど?!」
ルナは頬を膨らます。
「んもう!いいわよもう!」
そう言いながら髪をほどき、帽子をかぶると色気も何もないその灰色の帽子の中に髪の毛を詰め込んでいく。
フェンリルは銀色の液体をよくかき混ぜてからヘラとともにカレンに渡した。
「よく混ぜておいた。特に難しい作業じゃないから手伝ってもらう。裏面は良いから見えているところには満遍なく塗って。1分に2、3回くらい時々混ぜなおして。君は心配だから僕の隣で作業してくれ。」
何せクリスタルは15本もある。手分けして作業を進めなければならない。
「ルナは奥からだ。」
ルナにはごく短く告げる。
「これってアレ?クリスタルオベリスクを建てたときの?」
聞きながら、ルナは慣れた調子で缶の中身を混ぜる。
「そうだよ。さすがルナ、僕の助手だね」
フェンリルはニコリと笑顔になる。手分けしてあらかた塗り終わるとフェンリルはガレージに備えつけられた雷のマナの伝達ケーブルをクリスタルの両端につけた。
「これから雷のマナを流すから気を付けて。触ると死ぬ」
フェンリルの真剣な物言いにカレンは思わず唾を飲んで一歩後退りをする。
「これはメタルリキッドスライムの死骸をエーテルで溶いたものだ。」
「ひい、死骸!」
おののくカレンにルナが快活に笑う。
「スチーマーってそんなのばっかりよ」
「脳髄は外してあるから大丈夫だよ」
フェンリルもよくわからない理屈をニコリと笑いながら解く。
「メタルリキッドスライムは脳髄からのマナの供給でその硬さを調整しながら生きている。だからこうやってマナを流すと」
言いながらスイッチを入れる。カチン、と表面が硬化する。
「この状態なら釣りあげて、クリスタルを傷つけずに移動させられる」
そう言いながらルナに分厚い耐電手袋を投げて寄越す。
「カレン、危ないから君は最初は見ててくれ」
「え、最初は?」
「もちろんだ。そのうちやってもらう。この作業はこの先毎日あるんだからね」
そう言うと釣具を準備した。
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