第21話
「とにかく、誰でもいいから令嬢と踊ってください」
隊長が王子をフロアにグイグイ連れていく。
王子は明らかに不機嫌な顔をしているのだが、そんなことにかまってはいられないのだ。
「そんな気分では無い」
アンリエッタに逃げられた王子は、その事でかなり不機嫌な様子だった。
「デュルク伯爵令嬢と踊ってください」
隊長は悲壮な声で王子にせがむ。
「何故だ」
「1番目立つんで」
「……」
安易な理由でファーストダンスの相手を決めるのどうかと思うが、とにかく王子が令嬢と踊ってくれないと話にならないのである。
「シオン」
唐突に、ご指名が入る。
「なんでしょう?」
「俺の代わりに令嬢とダンスをしろ。俺の目の前で」
無茶ぶりである。
でも、ゲームにあったんだよなこの展開。親衛隊のイケメン数人が、王子の前で令嬢とダンスをさせられる謎な儀式。
仕方が無いので、俺は適当な令嬢を一人エスコートした。
王子の前に連れてくると、令嬢は王子に自己紹介をする。
そして、なぜか俺とダンスをするのだ。最初は不機嫌そうだが、王子に見つめられていると分かると、満面の笑みで王子にアピールが始まった。
普段からいざというときのため、潜入捜査のためなどという名目でダンスは習っていた。
令嬢の邪魔にならない程度には踊れているはずだ。
俺の他にも数名の同僚が令嬢と踊らされていた。
椅子に座った王子は、大して面白くもないという顔をしてそれを眺めていた。
俺はゲームと同じ状況になったことに安堵しつつも、これが一体誰の、ルートなのか考える。
参加した令嬢と、しなかった令嬢でルートが分かるはずなのだが…
さっき王子は、アンリエッタとガゼボで逢い引きしていなかったか?アンリエッタが王子ルートに入ったんじゃない?逃げられた?
おかしい。どこかがゲームと違っている。
アンリエッタと、逢い引きしたのにアンリエッタと踊らない?
俺は、王子が席を立つまで令嬢たちと踊らされた。親衛隊の護衛としては、令嬢の顔と名前を覚えられたので、なかなかいい仕事ができたので良しとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます