第6話 比較的単純な考え
そして夜が明けた。
パシェニャは遅く起きた。ナタリアは紅茶を飲んでいて、ミーシャはソファーで気持ちよさそうに寝ている。
伸びとあくびをするパシェニャ。
「おはよう、ナタリア。しっかし……ナタリアも容赦ないわね。わたしとミーシャと教官はほぼ直接的にサモルグに恨みがあるけれど、あんなにまでブッ潰す作戦にしてくれるなんて思わなかった。でも、本当にありがとう」
パシェニャは尊敬の念を表した。
「当然のことをしたまでよ。倫理観に欠ける? そのとおり。わたしも、サモルグの勢力を四分の一にまで減らそうとは常々思っていたの」
「理由を聞いてもいい?」
「パッチー、一部はあなたと同じ。サモルグに両親を殺されて、しかも両親ともヤク中にされていたことを知って、さらには子供暗殺者にされたから。それが理由」
「へ……? じゃあ、なんで今まで黙っていたのよ」
「リーダーの命令に慈悲や怨恨が入っていてはいけない。そう教わったのよ。でも、今回の怨恨は本当に赦し難いものだった」
「ふーん……」
パシェニャはナタリアの『過去』の細かいところを聞きたくなったが、やめておいた。
「さて、この後どうするか、ね」
「そう、その話が聞きたかった」
「『ギルド』という名前のギルドがあるのよ。そこへ移籍するわ」
サモルグの幹部ナタリアはそう言った。
「なぜ? 幹部の座があるのだから、サモルグのボスを『説得』するとかそういう方針だと思っていたわ」
「『ギルド』とサモルグはもともと対立していた。サモルグの勢力が弱まった今が、サモルグを壊滅させる絶好のチャンスなの」
ナタリアは語気を強めて力説した。
「わかったわ」
パシェニャはサモルグは……両親の仇……そして友人の仇……葬り去るべきもの……シンプルに考えることにした。
しかし、サモルグを潰す計画はなかなか進行しなかった。現金という名の実弾が足りなかったのもあるし、サモルグが『おとなしく』なってしまったのも原因だった。
現状維持でいいのでは? ナタリア本人すらもそのようになってしまっていた。
* * *
サモルグの幹部になったナタリアと、その部下のパシェニャ。やっていることは……
「裏カジノでのカードでのシノギも飽きてきたわ。もっとこう、暗殺の依頼がバンバンくるのかと思ってたわ」
「あら、パッチーは人を殺したいの?」
「いや、平和主義が一番とは思っているけれど」
「しかし……カードといえばだけど、よくあの場でマクドナルド兄弟を野放しにしたわね、ナタリア」
「マクドナルド先生は銃など使ったことがないらしいっていう情報があったのよ」
「本当に?」
「お兄様――教官に聞いたの」
「なるほどね。納得いくわね」
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